目次
「薄型レンズ」とは?
「薄型レンズ」の仕組み
・屈折率
・設計
・屈折率と設計の組合せ
「薄型レンズ」の効果
「薄型レンズ」のメリット・デメリット
「屈折率」と「設計」以外の方法で薄く仕上げるコツ
「終わりに」
「薄型レンズ」とは?
出来上がったメガネのレンズが分厚くて、フレームから大きくはみ出していたとしたらショックを受ける方もいらっしゃると思います。
特に中度~強度近視の方はレンズの周辺部が分厚くなってしまうので、眼鏡専門店としては見栄えを気にされる方に対して薄型レンズをお奨めすることが多いです。
では、根本的に薄型レンズとはどういうものなのでしょうか?
薄型レンズとは素材による「屈折率」の違いや「設計」の進化により、スタンダードなレンズより薄く仕上がるレンズの総称です。近視用レンズ、遠視用レンズ、老眼用レンズ、遠近両用レンズでも薄型レンズが発売されており、選択幅も多くなっています。
スタンダードなレンズにするか、薄型レンズを選択するかは、メガネ出来上がり時の見栄えに大きく影響する要素ですので、気になる方は是非、ご参照ください。
「薄型レンズ」の仕組み
● 屈折率
メガネのレンズは光を曲げて焦点が合う距離を変えることでピントが合うようにする仕組みですから、光を曲げる力が強いか弱いかがポイントであり、その光を曲げる力を屈折率と呼んでいます。
空気(真空)の屈折率を1.0として、プラスチックレンズの場合はスタンダードなレンズが1.50、それより薄く仕上がるものが、1.56、1.60、1.67、1.70、1.74、1.76等となり、同じ度数でも屈折率が高いほうがレンズの厚みが薄く仕上がります。
● 設計
昔は「球面レンズ」しかありませんでした。球面レンズはレンズの表面と裏面の両面がカーブしていて、中心部はユガミが少なく物が綺麗に見えるのですが、周辺部に行けば行くほど物が歪んで見えやすいという特徴があります。
この特徴からレンズの周辺部が厚くなってしまうことや、横目で見るとユガミを感じてしまうというデメリットが生じていました。
そこで開発されたのが「非球面レンズ」です。レンズの表面 = 外側を非球面設計にすることで、周辺部の歪みを少なくし、レンズ自体も薄く軽く仕上げることが出来るようになり、デメリットもだいぶ解消されました。
その後、さらにレンズの製造技術が進化し、レンズの裏面 = 内側を非球面設計にすることが出来るようになり、さらにレンズの両面を非球面設計にした「両面非球面レンズ」が誕生したことで、各種デメリットが大幅に改善されていきました。
これにより同じ度数、同じ屈折率とした場合、球面 → 非球面 → 両面非球面 の順で薄くすることが可能になりました。
● 屈折率と設計の組合せ
薄型レンズは「屈折率」と「設計」の組合せで出来上がりが違ってきます。
メガネ出来上がり時の見栄えを良くするためには、素材による「屈折率」を上げるだけでなく、「設計」との組合せでより良いものを作るほうがお奨めです。
実際の寸法は下記のイラストでご確認いただけます。
左側はスタンダードな屈折率の球面レンズ、左から2番目は設計が同じ球面レンズですが、屈折率が高くなったレンズです。3番目は屈折率も上がり設計も上がったレンズです。一番右が屈折率も設計も最高クラスになったものです。
右へ行くほどフロントカーブ(レンズ外側)がフラットになっていきますので、凄く薄くなったように見えると思いますが、実際にメガネに枠入れした時、近視の方はフチの厚みが枠からどれくらいはみ出すかも重要になりますので、レンズの右上、もしくは右側の数字も合わせて判断いただくと良いでしょう。
因みに、遠視の方や老視の方が使うレンズは近視の方と違い中心が厚くなります。この場合も同じように屈折率と設計で薄く仕上げることが可能です。
「薄型レンズ」の効果
薄型レンズの効果を写真で確認してみましょう。
上段はシャープに見える範囲のイメージです。
左側の球面設計が31%、中央の非球面設計が64%、右側の両面非球面設計が77%と設計が進化するごとにシャープに見える範囲が広がっているのがお分かりいただけると思います。
シャープに見える範囲が広がった場合の効果の一つとしては、横目で物を見たときも物がハッキリ見えることです。具体的には運転時のバックミラーやサイドミラーの確認、バックの時の視線をご想像いただくと分かりやすいと思います。
中段は輪郭のズレと目が小さく見えてしまうデメリットの比較です。
特に相手から見た時に「目が小さく見える」ことがお悩みと言う方も多いのですが、これらに関しても完全になくなりはしませんが、設計が進化するごとに改善されているのが確認できると思います。
下段はレンズの厚さ比較です。
フロントカーブがフラットになっていきますのでレンズ全体もスッキリしますが、フチの厚さも薄くなっているのがご理解いただけると思います。 薄型レンズを選択いただくことで、このような効果が得られます。
「薄型レンズ」のメリット・デメリット
スタンダードな球面レンズと、屈折率の高い両面非球面レンズのメリットとデメリットを比較します。
●価格
価格に関しては、屈折率や設計が上がれば上がるほど値段が高くなります。店舗によって異なりますが、スタンダードなレンズと屈折率の高い両面非球面レンズでは、数万円の差になる事もあります。
●仕上りの厚さ・薄さ
仕上りに関しては、屈折率と設計の組合せで変わることをご理解いただいたと思いますが、選んだフレームによっても変わってきますので、別途、次の項目でご説明します。
●周辺部のユガみ
球面設計を基本とすると非球面設計が約2倍、両面非球面設計が約2.5倍、スッキリと見える範囲が広くなります。これは遠近両用レンズ等にも言えることですが「価格の違いは周辺部までスッキリ見えるかどうか」とも言われていますので、使い勝手の良さに関わってきます。特に度数の強い方や乱視の強い方にはお奨めです。
●目が小さく見える
前項目で写真付きでご説明しましたが、相手から見た時に「目が小さく見える」ことがお悩みの方には、完全に解消されるわけではありませんが、かなりの効果が望めますので、両面非球面設計がお奨めです。
●素材の重さ
超薄型レンズは薄くなった分だけ軽くなることもありますが、素材自体が重たいことで長時間のご利用時に疲れやすくなる可能性があります。
●色にじみ
薄型レンズは色がにじみやすいという特徴があります。
プリズムと言われる三角形のレンズを通すと、光は7色に分かれることをご存じの方も多いと思います。プリズムではなくとも虹が同じような働きをしますのでご理解いただけると思いますが、これと同じようなことが屈折率の高い超薄型レンズでも起こりやすくなります。
色のにじみに対する感じ方には個人差がありますが、度数が強い方で屈折率が高い超薄型レンズを選択する場合は、注意が必要になる場合もあります。
「屈折率」と「設計」以外の方法で薄く仕上げるコツ
屈折率が高い素材を選ぶか、設計が進化したものを選ぶか以外に下記の方法で薄く仕上がることも可能です。こちらはフレーム選びの際に使える方法ですので、是非、ご参考にしてください。
① 小さめのフレームを選ぶ
近視のレンズは中心が薄くて周辺部に行けば行くほど厚くなるレンズですので、小さいフレームを選ぶことで分厚くなるところまで使わずに済む場合があります。
ただし、フレームが小さすぎると視野が狭くなってしまいますし、フレームが目線に入って邪魔になる可能性もありますので、店頭でフレームを掛けてみてチェックすることをお奨めします。
② 黒目とフレームの中心を合わせる
メガネの常識として、黒目の中心にレンズの光学中心を合わせるように作る関係上、近視のレンズは周辺部に行けば行くほど厚くなるので、出来るだけ中心から近い部分だけで作ったほうが薄く仕上がります。
よって、メガネを掛けた時の黒目の位置とフレームの左右の中心が同じであれば、耳側と鼻側の厚みが同じになり、分厚いところまで使わなくて済む場合があります。
③ 太い枠で隠す
最近の流行でもある太いプラスチックフレームをご利用いただくことで、レンズの厚さを隠すことも可能です。
逆に、枠が無いフレームの場合、レンズのフチを平らに削る関係上、予想より分厚く感じることがありますので注意が必要です。
最後に
レンズの厚さに関しては、レンズの度数、乱視の有無、選択したフレームの大きさや形状によって、どの程度の屈折率や設計を選ぶべきかが異なります。度数が弱い場合はレンズの厚さがあまり変わらない為、ハイクラスの屈折率や設計を選ぶ必要が無い場合もあります。
また、枠が無いフレームの場合は薄く作りすぎると強度が不足してしまう場合もあります。
いろいろな要素が絡むことですので、ご予算と合わせて遠近両用プロショップのスタッフにご相談されることをお奨めします。
メガネやメガネレンズにお困りの方はお近くの「遠近両用プロショップ」へ。こちらの「ご相談・お問い合わせフォーム」からお気軽にご相談ください。