メガネ選びのポイントレンズのはなし

メガネ作りで後悔したくない貴方に~トップメーカーのHOYA様に聞きました<後編>

前編ではHOYA㈱様のホームページに掲載されているレンズコートの表の内容をご説明しましたので、後編では表中のコートとの組合せや単独でのご利用となる「コート」や「機能」に関して、引き続きレンズエキスパートの山本晋様にご説明を頂きました。

前編の基本コートのご説明はこちらから →

メガネ作りで後悔しないポイント…抗菌コート

山本:先ずは「抗菌コート」からご説明していきましょう。

抗菌コートは今の時代だからこその機能で、細菌の増殖を抑える抗菌コートをレンズに施すことで、レンズの表面を衛生的に保つことができます。

筆者:安心をプラスする考え方ですね。

山本:レンズの撥水コートと反射防止コートの間にAG+(銀イオン)成分を含む抗菌コートを挟むことで、レンズ表面に抗菌性能を持たせる事を実現しました。

筆者:抗菌の効果ってどれくらい続くのでしょうか?

山本:レンズ表面に多くのキズが付かない限りその機能は持続します。

HOYA 抗菌コート

筆者:どんな方にお奨めでしょうか?

山本:こういう時代ですから全ての方にお奨めではあるのですが、特に医療・介護関係者とか、乳幼児、高齢者、ペットと同居のご家族にもお奨めしたいです。

メガネ作りで後悔しないポイント… KUMORI291(くもりにくい)

山本:次にご説明するのは「KUMORI291(くもりにくい)」コートですが、特別なメンテナンスがいらないくもりにくいレンズコートになります。

レンズの両面にくもりを抑制する特殊なコーティングを施すことにより、優れたくもり低減性能を発揮し、さらに表面の拭き取りやすさも特徴のコートです。

HOYA KUMORI291 くもりにくいメガネレンズ マスクでもくもりにくいメガネ

筆者:「KUMORI291」が発売される前にも、くもり止めのコートってありましたよね?

山本:はい。他社様からですが発売されていました。

筆者:確か、専用のメガネ拭きや液体の塗布で定期的なメンテナンスをする必要があり、その手間が原因で徐々に販売数が減ったように記憶しています。

山本:そこでHOYAとしてはメンテナンスフリーで、通常のレンズと比べると3倍もくもりにくいレンズを開発させて頂きました。

筆者:どんな方にお奨めでしょうか?

山本:マスクをつけたときにメガネがくもるという方、お料理でメガネがくもって煩わしいという方、運動中に汗をかくとメガネがくもって集中できないという方にお奨めです。

筆者:最近は電車の中でもマスクを外している方が増えましたが、ご商売されている方はまだまだマスクを装着せざるを得ない状況ですので、こういったものがあると助かると思います。

山本:そうですね。「抗菌コート」と同じように医療・介護関係者と接客業に従事されている方にお奨めなのですが、メガネがくもる事で視界が不良となり、転倒等の危険性が増すことから、高齢者やそのご家族の方にも喜ばれています。

メガネ作りで後悔しないポイント… MIRRORコート

山本:MIRROR(ミラー)コートは、これまでにご紹介してきた機能的なコートとは違い、ファッション的な要素が強いコートです。

筆者:機能的なメリットはありますか?

山本:機能面では眩しさを防ぐ効果も望めますが、MIRRORコート単体ではそれほど大きな効果は望めるものではなく、どちらかと言うとサングラスを作る時に追加する場合が多くなります。

HOYA

筆者:どのようなサングラスレンズと組み合せるのがお奨めですか?

山本:お奨めは偏光レンズですね。

筆者:では、偏光レンズのご説明をお願いします。

メガネ作りで後悔しないポイント…偏光レンズ「POLATECH(ポラテック)」

山本:皆様、よくご存じの路面や水面で反射した反射光をカットする偏光レンズですが、HOYAの偏光レンズ「POLATECH」は一味違います。

筆者:何が違うのですか?

山本:一般的な偏光レンズは、レンズとレンズの間に偏光フィルムを挟み込んでいますので、どうしてもレンズが厚くなってしまうのですが、HOYAの偏光レンズPOLATECHは、レンズ表面に偏光膜をコーティングしていますので、レンズを薄く仕上げることが可能です。

さらにレンズの厚みを抑える屈折率1.60及び1.67のラインナップとなりますので、度数が強めの方には朗報かと思います。

筆者:近視の方はレンズの厚みが気になりますので有り難いですね。

山本:また、レンズ表面へのコーティングですので、今までの挟み込みタイプでは出来なかった“フチなし”タイプのフレームや“リムロン”と呼ばれる透明な糸でレンズを吊っているタイプのフレームとの組合せも可能です。

筆者:フレームの形状を問わず、お気に入りのフレームで作れるのは良いですね。

因みにレンズの色味はどんな色がありますか?

HOYA偏光レンズPOLATECH

山本:偏光機能を重視したダークカラーのベーシックカラーシリーズが9種類。偏光機能を重視したダークカラーでRay-Ban(レイバン)カラーをイメージしたRyカラーシリーズが6種類。街でもおしゃれなライトカラーのBrightカラーシリーズが6種類、全21色から選べます。

先程、お伝えしたMIRRORコートと組合せることで、より眩しさを防ぐことも可能ですし、見栄えを良くすることも可能です。

メガネ作りで後悔しないポイント…調光レンズ「SENSITY2」「MISTY」「SENSITY DARK」

筆者:サングラス繋がりで、調光レンズに関してもお願いします。

山本:偏光レンズとは違い、紫外線や温度によって色の濃さが変化するレンズを調光レンズと言います。

HOYAでは「SENSITY2(センシティ2)」、「MISTY(ミスティ)」、「SENSITY DARK(センシティダーク)」の3種類の調光レンズをご用意しています。

筆者:では、それぞれの調光レンズに関して教えてください。

山本:先ずSENSITY2は、室内ではほぼ無色の状態なのですが、屋外に出て紫外線を浴びるとディープカラーに色づく調光レンズです。

筆者:調光レンズも昔からありましたよね?

山本:そうですね。2021年までは「サンテック」と言う名前の調光レンズを販売していましたが、2022年にSENSITY2を発売させて頂きました。

筆者:何か違いがあるのですか?

山本:サンテックとの比較で、色の戻り(退色)のスピードが約2倍になりました。

筆者:それは凄いですね。調光レンズは色が濃くなるのは早く感じるのですが、色が薄くなるには結構な時間が掛かるイメージがありますよね。

山本:はい。ですので、色の戻りが約2倍のスピードになったのは大変喜ばれています。

また、発色も90秒以内となっていますので、気が付くと色が付いている感覚で使えると思います。

筆者:では次に「MISTY」についてお願いします。

山本:MISTYも紫外線に反応して色が濃くなる調光レンズなのですが、女性向きの色味でほんのり淡く目元が染まる調光レンズです。メイクやファッションにも合わせやすくおしゃれも楽しめます。

筆者:色は選べますか?

山本:SENSITY2とMISTYの色味は下記のようになります。

HOYA SENSITY2 SUNTECH_MISTY ホヤセンシティ2 ホヤサンテックミスティー

筆者:確かにSENSITY2はほぼ無色に近い状態から、かなりの濃さまで変化しますのでサングラスとして使いやすいでしょうが、MISTYはほんのり淡く色づく感じで女性の日常でのご利用にも使いやすい色味ですね。

山本:そうですね。でも、後悔しない為にも、事前に調光レンズのデメリットを知っておくことが大切です。

筆者:どのようなデメリットがあるのですか?

山本:調光レンズ全般に言えることですが、発色は早いのですが退色には時間が掛かります。これにより急に暗い場所に入ると光量が不足して危険ですので、トンネルや地下駐車場等での使用は禁止となります。

次に、気温が高いとあまり濃くならないのに、寒いと思ったより濃くなる事です。   

色味や紫外線の量によっても異なりますが、夏場や朝夕の眩しさを防ぎたい場合は色が変化しないサングラスの方が良い場合もあります。

経年劣化やキズによる濃度の低下や色調の変化もありますし、光学的には何ら問題はありませんが、干渉縞が見えることがあることも事前に知っておいた方が良いでしょう。

また、結構重要なのが、日傘や帽子で紫外線を遮ったり、紫外線カットが施されている車の中では色が濃くならないことです。

筆者:知らずに買ってしまうと、後悔する可能性がありますね。

山本:はい。このような調光レンズのデメリットは、購入前に知っておくことで、購入後に後悔する事も少なくなると思います。

因みに、まだご説明していなかった「SENSITY DARK」についてですが、SENSITY DARKも調光レンズではあるのですが、上記の紫外線で色が変化する調光レンズとは違い可視光線でも色が変化しますので、紫外線がカットされた車内でも多少は色づき、眩しさを和らげてくれます。

HOYA SENSITY DARK 可視光調光レンズ

筆者:紫外線カットが施されている車の中でも、色が濃くなるのですか?

山本:条件によって濃度は異なりますが、紫外線カットが施されたクルマの中でも、ある程度の発色が期待できます。

筆者:朝夕の眩しさは色が変化しない濃い色のサングラスでも防ぎきれませんよね。

山本:確かに難しいですね。太陽を直視するようなものですから。

筆者:でも、1本のメガネで室内ではメガネとして使え、屋外ではサングラスとして使え、車内でも眩しさを和らげてくれるなら、特に近視で常にメガネが必要な方にはとても便利ですね。

山本:そうですね。一般的なカラーレンズとは違い、荷物も減らせますし、掛け替えの手間も無くなりますので、近視の方にはメリットが大きいですね。

筆者:因みに、色が変化しない一般的なカラーレンズに関しても教えて頂けますか?

メガネ作りで後悔しないポイント…カラー染色

山本:メガネレンズのカラー染色に関しては、オプティカルカラー協会から提案されている「アリアーテ トレス」という各メーカー共通のカラーをお奨めしています。

このアリアーテ トレスは肌の色にもトーンがあるという発想に基づいてレンズカラーを提案していますので、特に女性がメガネを作る時はカラー選びで楽しめると思います。

アリアーテ トレス カラーレンズ

筆者:確かに、色を選ぶ時って楽しそうですよね。

山本:そうですね。ピンクやオレンジ系の暖色は血行が良く見え、肌にハリやツヤ感が生まれるだけでなく、健康的で若く見られることもあるかもしれません。

逆にブルーや紫などの寒色は目元がスッキリ&クールに見えて、スタイリッシュでお洒落な印象になります。

他にもグレーは眩しさ対策をしつつ自然な色合いで、男女を問わず使いやすいですし、ブラウンも眩しさ対策をしつつ、コントラストを上げて物が見やすくなる効果も期待できます。

ただし、レンズカラーは肌やお化粧の色と合う、合わないがありますので、サンプルで相性を確認してから選択することをお奨めしますし、もし、自信が無いようでしたらご家族やご友人に見てもらって決めることも可能です。

筆者:それは良い方法ですね。

メガネ作りで後悔しないポイント…色が綺麗に見えるコート

山本:参考までにお伝えしますが、前編でお伝えした「Venus Guard COAT(ヴィーナスガードコート)」の中に「パール」という名称のコートがあるのですが、このヴィーナスガードコート_パールはカラーレンズとの相性が良く、色を綺麗に見せてくれるので、カラーレンズをご希望の際は検討してみることをお奨めします。

筆者:何故、色が綺麗に見えるのですか?

山本:レンズの反射光の色を見て頂くと分かりやすいです。

HOYA Venus Guard COAT(ヴィーナスガードコート)

筆者:スタンダードな「Venus Guard COAT」の反射光が緑色で、ブルーライト軽減の「Venus Guard COAT_LAPIS」が青紫、目元を美しく魅せる「Venus Guard COAT_PEARL」がクリアホワイトの反射光になっていますね。

山本:そうですね。この緑色や青紫の反射光が、せっかく付けたカラーレンズの色を見づらくしてしまうのです。

筆者:なるほど。確かに色の見え方を邪魔してしまうのが分かりますね。

山本:ですよね。これは見栄えの問題なので機能的なコートの話ではないのですが、こういったことに拘るのも良いと思います。

筆者:有難うございます。

最後に纏めをお願いします。

メガネ作りで後悔しないポイント…まとめ

山本:「コート」や「機能」は種類が多いので、消費者が一人で決めることは非常に難しいと思いますが、“お手入れの負担を軽減するもの”、“目の負担を軽減するもの”、“おうち時間を快適にするもの”、“屋外時間を快適にするもの”、“ファッション&ビューティー”など様々な効果をもたらしてくれます。

よって「何となく聞いたことがあるなぁ~」程度でも構いませんので、予備知識として知っておいて頂くだけでもメガネ作りでの後悔は減らせると思います。

また、眼鏡専門店で “困っていること”や“どのように使いたいのか”を伝え、お気軽にご質問・ご相談いただければと思います。

お話をうかがいました

山本 晋様

HOYAレンズエキスパート

1988年にHOYA株式会社に入社し、営業・お客様相談室等を経て、現在は、社内外向けの教育、取引先メガネ店で実施される「メガネ相談会」等での消費者対応の業務に従事。これまでの豊富なお客様対応を活かし、遠近両用メガネに関して平易に分かり易くお伝えすることをモットーにお客様対応を行っております。


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