はじめに … レンズの基本
近視・遠視・乱視・老視をご説明する前に、ご理解を深めて頂くための基礎知識として、レンズの基本をお伝えします。
レンズには凸(とつ)レンズと凹(おう)レンズがあり、凸レンズはプラスの度数で表され光を集める作用があり、凹レンズがマイナスの度数で表され光を広げる作用があります。
メガネを使って矯正する場合、個人個人の目の状況に合わせて目の前にレンズを置くことで、網膜(もうまく)と言われるスクリーンの役割を持つ部分に光が集まるように、度数を調整していきます。
因みに、レンズは度数が強くなると厚みが増し、それぞれの効果が高くなります。よって、凸レンズの場合は光が集まる焦点の位置がレンズに近くなり、凹レンズの場合は光がより大きく広がるようになります。
近視とは?
近視は「遠くがボケて見える目」です。
遠くなのに近視ってどういうこと?
実は「遠く」「近く」という見たい距離(場所)のことではないのです。下記のイラストを使ってご説明していきます。
イラストの上段を見てください。
光が侵入してくる左の方向から見て、網膜より手前の近いところで焦点を結ぶ目の状態を近視と言います。近くだから近視なのです。意外と単純ですよね。
また、焦点を結ぶ位置が網膜の近くの場合が弱度近視で、それよりもっと手前の場合が強度近視になります。一度、焦点を結んだ光は拡散していきますので、手前で結べば結ぶほど拡散した時のボケ具合が強くなり、見え具合が悪くなるという形になります。
では、近視の場合、どのように見えるのでしょうか?
弱度近視の見え方、強度近視の見え方をイメージした画像を掲載しました。正視の見え方も下段に入れましたので、見比べて頂けると分かりやすいかと思います。
もし、お子様の目の見え方をご心配されているのなら、下記の写真でイメージして頂けると思います。強度になればなるほどボケが強くなり、黒板はほとんど見えなくなってしまいますので、勉強に支障をきたさないよう早めの対応をお奨めします。
因みに、近視は「遠くがボケて見える目」ですが、「近くは意外と見やすい」という特徴もあります。
たまに、近視の人は老眼にならないという噂話を耳にしますが、実は元々近くが見やすいがために気づかないだけなのです。近視の人も同じように老眼になりますのでご注意ください。
遠視とは?
近視の説明の流れからしてご想像がつくと思いますが、遠視は網膜の後ろの遠いところで焦点を結ぶ目の状態を言います。網膜より遠くだから遠視なのです。
弱度、強度に関しても近視とおなじなのですが、網膜を挟んで少し先が弱度、より先が強度と順番は逆になります。
また、遠くで焦点を結べば結ぶほど、網膜上のボケは大きくなりますので、ボケ具合が強くなり見え具合が悪くなるという形になります。
次に見え方に関してですが、基本的には近視の時と同じです。弱度であれば少しボケますし、強度になればボケが強くなります。
ただし、弱度の遠視の場合、目の中にある水晶体という凸レンズを膨らまして度数を強くすることで、焦点の位置を手前に持ってくることも可能です。焦点の位置を網膜上に調節することが出来れば物をハッキリと見る事が出来ますので、正視の同じような見え方になります。
因みに、近くを見る時は水晶体をさらに大きく膨らまして焦点を合わせるのですが、遠くを見る時も近くを見る時も常に水晶体を膨らましていることで、目の中にある筋肉が疲労を起こし、目が疲れるといった症状を起こしやすくなります。
この「目が疲れやすい」というのが遠視の特徴です。
乱視とは?
乱視と聞くと「何かの病気?」とびっくりされる方がいらっしゃいます。メガネを作る時に乱視の度数を入れるか入れないかは、強さや見え方、感じ方によっても異なりますが、実は多くの方が乱視を持っています。では、乱視って何のことでしょうか?
乱視も近視や遠視と同じように、焦点が網膜上で結ばない目の状態のことですが、近視や遠視と違い、乱視はボケに方向性があると考えてください。
一例として近視性の乱視をイラストにしてみました。
横方向の光は網膜上に焦点が来ているのですが、縦方向の光は網膜の手前に焦点があります。これにより、縦方向と横方向の見え方に違いが出てくるのです。横方向はしっかりと見えていますが、縦方向はボケが生じています。
ボケ具合や方向性は個人個人によって異なりますので、斜めがボケるという人もいればほとんど変わらないけど…という人もいるでしょう。中には目をつぶる度に見え方が変わるという人もいらっしゃるかもしれません。
老視とは?
老眼は近視・遠視・乱視とは違い加齢に伴って起こる目の状態で、眼が良かろうが悪かろうが、誰もがなるものと言われています。
具体的にご説明しますと、老眼の症状が現れていない若い方は、近くを見る時は毛様体筋を収縮させて水晶体を厚くして近くにピント合わせをしますが、年齢を重ねるごとに毛様体筋の収縮力は弱まり、水晶体を十分な厚みにすることが出来なくなり、網膜に焦点を合わせることが出来なくなっていきます。
個人差はありますが老眼は徐々に進行していくものですので、近くに焦点を合わせることが出来なくなる少し前の30代から40代前半には、疲れ目を感じることが多くなります。
40代半ばから50歳前後には、近くにピントを合わせることが出来なくなり、老眼鏡に頼らざるを得なくなっていきます。
その後、老眼の症状は右肩上がりで進行し、ある程度進んだ60代位でゆるやかな横ばいになっていきます。
残念ながら現在のところ根本的な治療方法はなく、完治することもありません。
よって、老眼鏡や遠近両用のメガネ・コンタクトレンズを使って、上手に付き合っていくことが大切です。
近視の矯正方法
近視は網膜より手前で焦点を結ぶ目なので、焦点を後方に移動させる必要があります。
よって、光を広げる凹レンズを目の前において、一度、光を広げてから目に入れるようにし、網膜上で焦点を結ぶようにレンズを調整していきます。
人によっては、裸眼の時の見え方との差が大きくならないように弱めに調整することもありますし、初めてメガネを作る場合は、本来必要とする度数の半分くらいで作る場合もあります。
遠視の矯正方法
遠視は網膜の後ろで焦点を結ぶ目なので、焦点を前方に移動させる必要があります。
よって、光を集める凸レンズを目の前において、一度、光を集めてから目に入れるようにし、網膜上で焦点を結ぶようにレンズを調整していきます。 尚、遠視の場合も近視と同じように、弱めに調整することがあります。
乱視の矯正方法
乱視の場合は縦と横、もしくは斜めと直角方向の斜めがどこに焦点を結ぶかで使うレンズが異なってきますが、下記のイラストで例に挙げた近視性の乱視の場合、縦方向は網膜上に焦点があっていますので、レンズの度数は無しの状態にし、横方向は網膜より手前で焦点を結んでいますので、近視の方に使う凹レンズを横方向にだけ入れて網膜上に焦点を結ぶように調整していきます。
因みに、縦方向も横方向も網膜より近いところで焦点を結ぶ乱視の場合、縦も横も近視系のレンズを入れることとなりますが、縦と横で度数が違うレンズを入れて調整していきます。
老視の矯正方法
今までメガネを必要としなかった方の場合、老視は遠視と同じ凸レンズを使って網膜上に焦点を結べるように調整していきますが、年齢を重ねて弱まった毛様体筋の収縮力を補うような意味合いになります。
どれくらい近くを見る時間が長いか、どれくらい近づけて見たいかなど、人によって条件が異なりますので一概には言えませんが、おおよそ2~3年ごとに老眼の度数を上げて補う量を調整していく必要があります。
また、老眼鏡は近くを見るためのメガネになりますので遠くは見えません。よって、遠くを見る時は老眼鏡を外していただく必要があります。
近視の方が老眼になった場合の矯正方法
近視の方は元々、遠くが見づらい目をしているので、遠くと近くの両方にピントが合わせられるようなレンズが便利になります。それが一度は聞いたことがあるかもしれない「遠近両用レンズ」というものになります。
遠近両用レンズは、上半分が遠くを見る度数、レンズの下部が近くを見る度数、その中間が2~3mから50~60cmを見る度数となり、徐々に度数が変化するレンズです。
目線の上げ下げでピントを合わせるような使い方になりますので、使い方に慣れるまで少し時間が掛かります。
また、見たい距離に合わせて室内で使いやすい中近両用レンズ、老眼鏡より広い範囲にピントが合う近々両用レンズという設計もあり、その中で細かく設計が分かれていますので、困っていることやどうやって使いたいかなど、出来るだけ多くの情報を眼鏡店の販売員に伝え、レンズを選択していくことが必要になります。
遠近両用レンズに関して、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてご参照ください。 → 遠近両用メガネ徹底解説
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