老眼対策

「遠近両用メガネとは?」遠近両用メガネを徹底解説!

老眼の対処方法としてよく聞く「遠近両用メガネ」。でも、遠近両用って実はよく知らない方が多いです。そこで遠近両用レンズに関して、目的別の中近両用レンズ、近々両用レンズも含めて、えんきんドットコムが徹底解説していきます。

目次


遠近両用メガネとは?

 1:バイフォーカルレンズについて

 2:累進多焦点レンズについて

累進多焦点レンズとは?

 1:累進多焦点レンズの人気順位は?

 2:累進多焦点レンズの使い方を種類別にご紹介

 ・遠近両用レンズ

 ・中近両用レンズ

 ・近々両用レンズ

遠近両用って見づらいと聞いたけど?

累進多焦点レンズのグレード選択について

 1:設計・技術・オーダーメイド

 2:素材と屈折率

 3:オプション(コーティング等)

遠近両用と中近両用の違いを基に複数利用のご提案

私の場合は、どうすればよいですか?

 1:近視の人が老眼を意識した場合、どうすればよいですか?

 2:目の良い人が老眼を意識した場合はどうするの?

 3:遠近両用メガネは何歳から使うべきか?

 4:老眼の度数が強くなった時はどうしたらよいですか?

遠近両用に向いているフレームってありますか?

遠近両用を購入すれば、老眼対策はバッチリですよね?

最後に遠近両用メガネの購入になかなか踏み切れないという方に


「遠近両用メガネ」とは?

遠近両用メガネのレンズは、見た目の違いで大きく2種類に分かれています。一つ目はバイフォーカルレンズ、二つ目は累進多焦点レンズです。

遠近両用メガネの分類 遠近両用レンズの種類

共にレンズの種類や度数の設定によって「遠近両用」「中近両用」「近々両用」が存在しますが、現在、販売されているレンズは累進多焦点レンズがほとんどの為、バイフォーカルレンズに関しては初めに少しだけのご紹介となります。

1:「バイフォーカルレンズ」について

現在、50代の方が社会に出た頃、レンズの上下で境目のあるバイフォーカルタイプの遠近両用メガネを掛けた方が周りにいらっしゃったのではないでしょうか?

実際に40年前まではバイフォーカルレンズしかありませんでしたが、1980年に国産の「累進多焦点」レンズが発売され、境目が無く見栄えの良いことを理由に遠近両用の主流は徐々に「累進多焦点」の遠近両用レンズへと入れ替わっていきました。

今ではお仕事等の理由による特別な方を除いて、累進多焦点レンズがほぼ100%近くになっています。

バイフォーカルレンズの種類 遠近両用レンズの種類

バイフォーカルレンズの種類

 (上段左から右へ、下段左から右へ)

・A型25/28mm 小玉の上がフラットなタイプ、大きさ2種類

・B型25/28mm 小玉の上が丸いタイプ、大きさ2種類

・丸型15/24mm 小玉が丸いタイプ、大きさ2種類

・シームレス   小玉の境目が無いタイプ

・ワイドタイプ  A型の大きいタイプ、近くの度数重視

・EX      ワイドタイプよりも近くの度数重視

・三重焦点    遠く・中間・近くの3種類の度数設定

・パイロット用  上下に小玉を設定したタイプ

バイフォーカルレンズの定番商品と言えばB型25mm。次いで販売数が多かったのがB型28mm、A型・・・と続いていたように記憶しています。丸型は小さいことから見づらいので通常販売はほとんど無く、右目の外側に一個だけ配置したゴルフ専用の片眼遠近両用メガネを作ったのを覚えています。ワイドタイプもほとんど販売したことがありませんでしたが、EXタイプは床屋さんに圧倒的に人気で、老眼だと気づかれることより仕事用として見やすさを優先される方に何度もご購入いただきました。パイロット用も同じでコックピットの上下に計器があるパイロットの方や、車の下に潜り込んで作業する整備士さんに人気でした。トライフィーカルに関しては経験数が少なく、販売後に使いにくいと言われて交換した記憶が残っています。

●バイフォーカルレンズのメリット

歪まない、長時間の近業作業も可能

●バイフォーカルレンズのデメリット

見え方が急に変わる、周りの人から老眼と気づかれる、中間度数が無い、新製品が開発されない(現在)、コーティングや機能・薄さなどバリエーションが少ない(現在)

2:「累進多焦点レンズ」について

累進多焦点は徐々に度数が変化するレンズの総称です。

前記のバイフォーカルレンズの遠近両用は一部を除き「遠く」と「近く」の2種類の度数しか設定されていません。下記イラストの二重焦点がバイフォーカルと同じような仕組みになります。

対して累進多焦点の遠近両用は、より細かい距離に合わせたレンズを組み合わせるようにして作られたレンズです。

遠近両用レンズの構造イメージ 累進多焦点レンズの構造イメージ

累進多焦点の遠近両用は徐々に度数が変化する為に、「遠く」と「近く」以外に「中間」に関しても見る事が可能です。

イメージ的には「遠く」は屋外、「中間」は屋内や室内、「近く」はお手元にピントが合うような感じで日常生活における距離感覚は下記の写真のようなイメージになります。

遠近両用レンズの使い方イメージ 遠方視 中間視 近方視

●累進多焦点レンズのメリット

見え方が徐々に変わるのでピントが合う場所が多い、中間度数がある、境目が無いので周りの人から老眼と気づかれない、目的に合わせて設計が多種ある、新製品が開発されやすい、コーティングや機能・薄さなどバリエーションが多い

●累進多焦点レンズのデメリット

ユレる・ユガむ、長時間の近業作業には向かない場合もある、老眼の度数が強くなってからでは慣れるまでに時間が掛かる

「累進多焦点レンズの種類」とは?

「累進多焦点レンズ」の種類に関しては、遠くから近くまで見える遠近両用、中間と近くを広くした中近両用、お手元からちょっと先まで見えるようにした近々両用の3種類が代表的です。

累進多焦点レンズの種類 遠近両用  中近両用 近々両用

・遠近両用

遠くから近くまで見える遠近両用は、一日中メガネを掛けている方、掛け外しが面倒という方にお奨めです。特に近視の方は遠くが見えないと不便ですので、老眼の対照年齢となった場合、普段掛けのメガネが遠近両用になる方が多いです。

・中近両用

中間と近くを広くした中近両用は、事務仕事や主婦の方など室内で過ごす時間が長い方にお奨めで、イメージ的には室内用の遠近両用といったレンズです。

遠近両用だけですと、どうしても中間や近くにピントが合う部分が狭いので、最近は遠近と中近の用途別の掛け替えをする方が増えました。

・近々両用

お手元からちょっと先まで見えるようにした近々両用は、老眼鏡より見える範囲が広いので新聞を読むときや読書が趣味の方、ノート型のパソコン作業にもお奨めです。

※備考

それぞれのレンズに対して、さらに遠く重視か、近く重視かなど、細かい設計が用意されていますので、普段の過ごし方、お仕事、ご趣味等に合わせて選択することが可能です。

「累進多焦点レンズの人気順位」は?

遠近両用が圧倒的断トツで1位です。

大手眼鏡レンズメーカーの出荷ベースでは、下記のようになっています。

A社_1位…遠近両用60%、2位…中近両用30%、3位…近々両用10%

B社_1位…遠近両用76%、2位…中近両用19%、3位…近々両用5%

理由は下記のようになっています。

 ① 近視の方は遠くが見える遠近両用が必要

 ② 初めての方は、無難な選択の遠近両用を好む傾向が強い

 ③ 買い替え時も前回と同じ選択をする事が多い

 ④ 遠近両用が有名すぎて、消費者は中近・近々を知らない

 ⑤ 販売店側も遠近両用をメインにお提案してきたため

累進多焦点レンズの人気順位 遠近両用  中近両用 近々両用

とは言え、昔からこうだったのでしょうか? 実は違います。過去のデータでは

A社_1位…遠近両用70%、2位…中近両用20%、3位…近々両用10%

B社_1位…遠近両用85%、2位…中近両用10%、3位…近々両用5%

順位こそ変わっていませんが比率的には中近両用が増えています。

これはリモートワークの影響やタブレット、スマートフォン等の利用時間増加も理由に挙げられますが、外出時に遠近両用を使い、室内では中近要用を併用される方が増えているのも理由として挙げられます。

尚、A社とB社で比率が微妙に違うのは元々の設計思想が異なるためであり、大きな意味はありません。

「累進多焦点レンズの使い方」を種類別にご紹介

累進多焦点レンズは『自分が見たい距離』に対して、それぞれのレンズに設定された『見える部分(ピントが合う部分)』『目線の上下やアゴのだし引き』によって『合わせること』『ピントが合う仕組み』になっています。

よって、それぞれのレンズに設定された『見える部分(ピントが合う部分)』をいかに自分が見たい場所に合わせられるかが基本となります。

そのことを十分にご理解いただくために、それぞれのレンズの使い方を下記に記載しましたので順に見ていきましょう。

遠近両用レンズ

累進多焦点の遠近両用レンズは、レンズの上部が遠く、真ん中より少し下が中間、下の方に近くを見る度数が設定されていますので、縦方向の目線の移動でピント合わせをすることになりますが、実際に遠くを見る時は左下の図のように、少しアゴを引いて上目使いで見るような感じの方が見やすくなります。逆に近くは少しアゴを出して見下ろすような感じの目線にすると見やすくなります。

累進多焦点レンズの使い方 遠近両用の使い方

また、イラストの左上のレンズの設計を見て頂くと分かりやすいのですが、特に中間距離と近くはピントが合う部分の横幅が狭いので、見たい物を顔の正面に持ってくるような感じにしないとボケが生じてしまいます。

さらに、レンズの鼻側下と耳側下の点線で囲われた部分は、ユレ・ユガミが発生してボケが強くなる部分ですので、この部分に視線が通らないような使い方が必要です。

中近両用レンズ

累進多焦点の中近両用レンズは、中間部と近くをメインにして作られていますので、遠くは辛うじて見える程度です。よって、遠くを見る場合はレンズの最上部を使い、上部から真ん中位が中間距離、真ん中より少し下からレンズの下部までが近くを見る部分となります。

目線の移動は遠近両用と同じように縦方向となりますが、ピントが合う位置が上下方向にも横方向にも大きくなっています。

累進多焦点レンズの使い方 中近両用の使い方

中近両用は横方向の視野が遠近両用より広いので、見たい物を顔の真正面に持ってこなくてもある程度ピントが合うので、横目でも物が見え視界が広く感じます。

近々両用レンズ

累進多焦点の近々両用レンズは、お手元などの近くだけでなく、その少し先まで見えるように作られているレンズです。よって基本的に遠くや中間距離は見えません。

目線の移動は遠近や中近と同じように縦方向となりますが、ピントが合う位置が広くなっていますので、視線を意識せずに使える便利なレンズです。

累進多焦点レンズの使い方 近々両用の使い方

近々両用レンズは遠近両用や中近両用といったレンズの仲間と言うより、老眼鏡の仲間と言った感じのレンズです。老眼鏡だとピントが合う距離が限られてしまいますが、そのちょっと先まで見える老眼鏡といった感じです。

「遠近両用って見づらい」と聞いたけど?

確かに3~40年前の遠近両用は、人によっては使いづらいと言われていました。

しかし、今の遠近両用レンズは老眼の度数が弱いうちに慣れてしまえば、普通に使いやすいレンズです。

累進多焦点レンズ 加入度数アップ 視野の広さ比較

日本で累進多焦点レンズが発売されたのが1970年代後半、国産に関しては1980年の事で今から40年以も前の話です。当時としては画期的な新製品でしたが、今の累進多焦点レンズと比べると設計的にも技術的にも未熟なものでした。

国産の累進多焦点レンズが発売された後、それまでバイフォーカルを使っていた方も累進多焦点にチャレンジして頂いたのですが、既に老眼の度数が強くなっている状態で累進多焦点に掛け替えた為、「ユレる」「ユガむ」「見づらい」「使いづらい」「慣れにくい」と言ったご意見が出ました。

バイフォーカルは単焦点のレンズを貼り合わせたような構造なので、「ユレる」「ユガむ」という現象は起きないレンズだったからです。それに比べて累進多焦点レンズは上記の加工写真のように、老眼の度数が強くなるとハッキリ見える視野が狭くなり、同時に両脇が黒くなっているユレ・ユガミが発生している部分が広がってしまうという特徴があり、これも要因の一つだと思われます。

さらに当時は「レンズに合わせて体を慣らしてください」という考え方が基本でしたので、メーカー側も販売店舗側も“慣らしてください”とご説明させて頂いておりました。

この時代にお買い上げいただいた方々には大変申し訳なく思いますが、こういった状況が重なり「遠近両用は使いづらい」という話が広まったのだと思います。

しかし、今は技術開発がどんどん進み、比較的お求めやすい初心者用の累進多焦点レンズから、個人個人の度数や眼の動きに合わせた最高級フルオーダーレンズまで幅広い種類が販売されるようになり、レンズのグレードを選択することが可能になったことで「遠近両用は使いづらい」というご意見は減ったように感じます。

「累進多焦点レンズのグレード選択」について

遠近両用レンズは個人個人の目の状態や使用目的によって、様々な種類のレンズから選択することが可能です。また、その選択次第ではお値段が10倍近く変わります。では、その選択を具体的にご説明していきましょう。

設計、技術、オーダーメイド

先ずは設計、及びオーダーメイドに関してですが、累進多焦点の遠近両用レンズは、どれだけ多くの設計や技術が含まれているかで大きな違いが生まれます。

例えば発売当初は、膨らんでいるレンズの外側しか削る事が出来なかった為に、レンズの外側に設計と加工を施した外面設計しかありませんでした。次に凹んでいるレンズの内側を削る技術が生まれ、内面設計が発売されました。

外面設計の良いところは、上下方向の視線の移動が内面設計より少なくて済むところで、結果的に視線の移動がラクになります。逆に内面設計は、横方向の視野が広がるのがメリットです。

外面設計 内面設計 両面設計 メリット

これらの良いところを合わせて出来たのが両面設計です。両面で設計を行えるようになったことで多くの設計を入れ込む事が出来るようになり、ユレやユガミも大幅に解消されました。

例えば、乱視軸のズレなどを最適に修正することでクリアに見える範囲が広がったのも進歩でしたし、左右の度数の違いから発生する倍率の違いを補正し、左右両眼でバランスを取ることが出来るようになったのも大きな進歩でした。

乱視軸と視線のズレを補正

また、新しいレンズが発売されるたびに補正ポイントの数量も大幅に増えていきました。

さらにその後、一人一人の個人データとフレームデータを加味して調整するフルオーダーレンズが生まれ、よりクリアに見える世界が広がりました。

パーソナルフィット フレーム前傾角 フレーム頂点間距離 フレームそり角

外面設計、内面設計、両面設計、フルオーダーと合計で4段階の設計をお伝えしましたが、イメージ的には「お試しセット」で使われるのが外面設計、レンズ単品で販売されている「スタンダードクラス」が内面設計、「ミドルクラス」が両面設計、「ハイグレード」がフルオーダーといった感じです。店舗やセール等によって販売価格は異なりますが、下限が10,000円前後とすると最高級品のフルオーダーは10万円前後になる事が多いです。

素材と屈折率

次に素材の屈折率についてですが、空気(真空)の屈折率を1.0として、プラスチックレンズの場合はスタンダードなレンズが1.50、それより薄く仕上がるものが、1.56、1.60、1.67、1.70、1.74、1.76等となり、素材の屈折率が高くなるとレンズが薄く仕上がります。

屈折率によるレンズの薄さ 屈折率と仕上がり 近視レンズの薄さ

近視の方は凹(おう)レンズという真ん中が薄くて周辺部が厚いレンズを使うのですが、度数が強くなれば強くなるほどレンズの周辺部が分厚くなります。フレームからはみ出したり、周りの人から見ると目が小さく見えてしまうなど見た目で嫌がる方が多いです。そこで写真のように屈折率が高いものを選んでいただき仕上がりを薄くします。

逆に遠視の方が使うレンズは凸(とつ)レンズといい、中心部が厚くなるレンズです。

共に屈折率が高いレンズ素材を選択していただくほど価格は上がります。

デメリットもお伝えしておきます。屈折率の高いレンズは欠点として色がにじむ場合があります。度数が強い場合は見た目重視も良いのですが、度数が弱い場合は出来上がりがそれほど変わらないこともありますので、そういった場合は無理に屈折率の高いレンズを選択しなくても良い場合があります。また、選択するフレームによっても出来上がりは変化しますので、店員さんにご相談することをお奨めします。

オプション(コーティング等)

最後にオプションをつけるか、つけないかの選択です。

オプションとして昔からあるのはカラー染色やUVカットですが、UVカットは標準装備のレンズも増えました。

最近は「くもりどめ」、「抗菌」、「ブルーライトカット」、「耐傷」、「耐熱」のオプションが人気です。また、「偏光レンズ」や「調光レンズ」といった目の保護や疲れ防止などの機能的なオプションも人気です。

メガネのオプション例 コーティングオプション

オプションを追加すると価格は上昇しますが、個人個人のライフスタイルにあわせたオプションを選択すると、より使いやすいメガネが作れます。

「遠近両用と中近両用の違い」を基に複数利用のご提案

下記に遠近両用レンズと中近両用レンズの使い方比較として、見る場所の違いを図にしてみました。左が遠近両用、右が中近両用です。

遠近両用と中近両用の使い方比較 遠近と中近の設計比較

写真の上段が遠くを見る時の例で「旅行」「運転」「ショッピング」などが代表的な例です。他には「映画・演劇鑑賞」「スポーツ観戦」「通勤」「セミナー受講」「釣り」「写真撮影」「登山」等も大部分が青い色をした遠くを見る部分を使って行われます。

写真中段の中間距離に関しては「テレビ」「お料理」「掃除」が想像しやすいかもしれません。他にも「演奏」「カラオケ」「絵画」「お洗濯」「パソコン」なども中間距離を多く使います。

写真下段の近距離は「パソコン」「編み物」「スマートフォン」を掲載しました。他には「読書」「新聞」「書道」「陶芸」なども近くを見ている時間が長い作業です。

どのようなことを行う時間が長いのかによって、ピントが合う部分が広くなっているレンズの方が使いやすいというのはご理解いただけると思います。

では次に遠近両用と中近両用の設計の違いをご紹介します。

中近両用の設計イメージ 遠近と中近の設計の違い

中近両用レンズの設計はイラストのように、遠近両用の中間と近くの部分を拡大したようなレンズになります。

言い換えると、遠近両用のデメリットの一つとなる中間と近くの視野の狭さを解消したレンズです。

これにより中間と近くを見る部分の左右の視野は格段に広くなり、鼻側下と耳側下にあるユレ・ユガミを感じてボケて見える部分がかなり外側に移動していますので、極端な横目を使わない限り視線に触れることなく楽に使えるようになります。

よって中近両用レンズは、5m以上の遠くをハッキリ見なくてもよい環境では、遠近両用よりも使いやすくなるのです。

人によっては、遠くがあまり見えないことがデメリットになる場合もありますが、歩き慣れた事務所内でのパソコンをメインとしたお仕事や、炊事、洗濯、お掃除などの家事をメインにご自宅内で過ごす時間が長い主婦の方には、視野の広さやユレ・ユガミの少なさと共に、目の疲れや肩こりなどが軽減される場合もあり、大変使いやすいレンズとなります。

最近は自宅で過ごす時間も増え、さらにスマートフォンの利用時間の拡大もあり、使用環境別や用途別の掛け替えをしながら、より快適に過ごそうとする方も増えていますので、是非、ご検討いただきたいレンズです。

尚、イラストからも分かるように中近両用は遠くを見る部分がほとんどカットされていますので、外出にはお奨めできません。メーカー側もはっきりと「運転には使用できません」と注意書きしています。

また、近視の方は遠くが見えない目ですので、中近両用のみで生活するのは難しく、外出時は遠近両用を、屋内室内では中近両用をといった形での併用をお奨めしています。

私の場合は、どうすればよいですか?

老眼は元々の目の状態によって対処方法が異なります。

さらに、老眼が進行して度数を変更しないといけなくなった時の対処方法にもコツがありますので順にお伝えしていきます。

1:近視の人が老眼を意識した場合、どうすればよいですか?

答えは一つではないと思いますが、近視で普段からメガネを掛けているなら、年齢によって下記のようにすることをお奨めします。

近視の方のレンズ移行プラン 近視の方の世代別レンズ提案

①疲れを感じる30代から40代半ば

 今掛けている近視のメガネの次は「サポートレンズ」がお奨め

②40代半ばから50歳前後なら

 今掛けている近視のメガネの次は「遠近両用」がお奨め

③50歳前後から50代半ばなら

 「遠近両用」と「中近両用」の併用がお奨め

④50代後半からは

 屋外では「遠近両用」、室内では「中近両用」

 長時間の近方作業や読書には「近々両用」を使う3種併用がお奨め

※備考

・遠近両用メガネは、老眼の度数が弱いうちの方が慣れやすいため、実際にお買い上げいただくことが多い年齢より少し早めのお奨め表記にさせて頂いております。

・50代前半の筆者の経験上、通勤や外出・セミナー受講時は遠近両用が使いやすく、会議やミーティング・来客を含む事務作業全般では通常の中近両用が使いやすいです。

パソコンに関しては、デスクトップが近く重視の中近両用、もしくは近々両用が使いやすく、ノート型は近く重視の中近両用が使いやすく感じます。ただ、人それぞれ環境や使用距離が異なるため、店員さんにご相談いただくことをお奨めします。

2:目の良い人が老眼を意識した場合はどうするの?

普段、メガネを必要としない人は、正視、もしくは弱度の乱視、弱度の遠視系の方が多いのですが、使用するレンズの都合上、近視の方よりも早く老眼鏡が必要になる方が多いです。老眼は誰もがなるものですので、こういった方々が特別に早いという訳ではないのですが、近視は遠くにピントが合わない代わりに近くにはピントが合いやすい目なので、どうしてもこういった事が起きやすくなります。

また、メガネを使ったことが無い方にとっては人生初のメガネとなりますので、大事になる場合も見られます。もし、メガネすら使ったことが無い方が、いきなり高価な遠近両用メガネを使うとなるとどうなるでしょうか?

メガネを掛けるだけでもストレスなのに、レンズの使い方まで意識しないといけないとしたら大変です。しかも、取り扱いも慣れていないのに、いきなり高価なものを扱うとしたら障壁が高くなってしまいます。

そこでこういった方は、スーパーやホームセンターで販売されている数百円から数千円で購入可能な既製品の老眼鏡から始めてみる方法もあると思います。ただし、既製老眼鏡は個人に合わせて作られたものではない為に長時間のご利用はお奨めできません。出来れば短時間のご利用にして頂き、先ずはメガネを掛ける事に慣れたり、見え方に対してご不便が解消されるかを試してみることをお奨めします。

その次は眼鏡店で作るオーダーメイドの老眼鏡です。オーダーメイドなので個人個人の目に合わせて作られており、長時間のご利用も安心です。フレームやレンズの種類にもよりますが、数千円から作ることも可能ですし、そこそこの物でも2~3万円で作製可能です。

ただし、既製老眼鏡やオーダーメイドの老眼鏡は費用面からして悪くはない選択なのですが、見える距離が限られることがデメリットになります。

そこでお奨めなのが近々両用と呼ばれるレンズです。 近々両用レンズは、既製老眼鏡やオーダーメイド老眼鏡のように見える距離がお手元に限られるのではなく、少し先まで見る事が可能です。これにより新聞を広げて読んだり、パソコン作業時に机上の原稿や資料を見たり、読書の時にテーブルに置いたコーヒーカップが見えるなど、見える距離に余裕が出来て大変使いやすく感じると思います。

元々眼が良い人にお奨めの近々両用レンズ 疲れ目対策の近々両用

ご注意いただきたいこととしては、既製老眼鏡、オーダーメイド老眼鏡、近々両用メガネは、近くを見る時のみ使う道具ですので掛け外しが多くなります。自ずとどこに置いたか分からなくなったり、踏んづけてしまうなどの事故も増えます。

掛け外しが面倒、持ち運びが面倒、保管が面倒と感じる方で、近くを見る時間が短い場合は、一日中、掛けたまま過ごせる遠近両用のご利用もご検討いただく価値があると思います。

3:遠近両用メガネは何歳から使うべきか?

遠近両用は老眼の度数が弱いうちの方が慣れやすいといった特徴がありますので、慣れやすさを考えると50歳が一つの目安です。また、個人差はありますが50歳を境にどんどん不便になっていきますので、出来れば50歳が我慢の限界と考えて頂きたいです。

因みに、眼鏡店の店員さんは知っているが故なのですが、40代前半や40代半ばには遠近両用に切り替える人も多くいますので、もし、見づらいようなら50歳より早くても問題ありません。

無理して我慢してもご自身が辛いだけですし、人によっては目の疲れや肩こり、背中の痛みを訴える方もいらっしゃいますので、対処するに早いことはありません。

最近は老けて見えないようなフレームで老眼鏡や遠近両用を作られる方も増えてらっしゃいますので、前向きに考えて店頭で若々しく見えるフレームを楽しみながら探していただくことをお奨めします。

遠近両用にお奨めのフレーム例

4:老眼の度数が強くなった時はどうしたらよいですか?

遠近両用レンズを上手く使うコツをお伝えします。

遠近両用レンズは、老眼の度数を上げると見づらかった距離でもピントが合うようになる(目に近づけられる)のですが、同ランクのレンズで老眼の度数を強くすると見える幅(視野)が狭くなってしまうという特徴があります。

よって、老眼が進行して買い替える際はワンランク上のレンズを選択して、近くが見えるようにすることと同時に、最低でも今までと同じくらいの見える幅の確保も行った方が見え心地の良い遠近両用を作れます。

ただし、今までの見えていた幅(視野)が狭く感じていたなら、さらにもう一つ上の設計ランクをご検討いただくのも良いと思います。

遠近両用レンズの買い替え時のグレードアッププラン

上記の図にはレンズのグレードをハイグレード、ミドルクラス、スタンダードと分けて表示しましたが、厳密には各グレードの中に2~3種類のレンズが存在し、メーカー数も数社ありますので、老眼の度数に合わせてどのクラスのレンズを選ぶかは眼鏡店のアドバイスを聞いて選択してください。

また、元々の目の状態、目の動き、度数の強さ、左右の度数差、使用時間、目的距離等の理由により、いきなりハイグレードのレンズをお奨めすることもありますので、予めご了承ください。

遠近両用に向いているフレームってありますか?

基本的に遠近両用レンズ専用のフレームというものはありません。

ただし、遠近両用などの累進多焦点レンズはレンズの上下で別々の度数が入っており、徐々に度数が変化するような作りになっているために、ある程度フレームの高さが必要になります。具体的には30mmと言われていますが、初心者の方ならもう少し広めの33mmとか35mmあったほうが使いやすいです。

また、徐々に度数が変化する場所を累進帯と呼んでいますが、累進帯の長さはグレードが上がれば上がるほど細かく選ぶことが可能です。

何故、選べるかと言うと、累進帯の長さは目線を下に下げる量(角度)に直結しており、目線を下げる量が大きければ大きいほど意識して下げないといけないので、人によっては近くの見づらさを感じてしまうからです。

累進帯の長さと目線を下げる量 累進帯長別の目線の角度

逆に累進帯の長さを短くして目線を下に下げる量(角度)を減らすとどうなるかというと、あまり目線を下げないでも近くが見やすくなるのは良いのですが、中間距離でピントが合う場所が減り、さらに遠くを見る場所のユレ・ユガミも大きくなってしまいます。人によっては遠くから急に近くになる感じで見づらさを訴える方もいらっしゃいます。

よって、目線を下げる量(角度)や近く見やすさ、ユレ・ユガミのバランスが良いところで、一般的に累進帯の長さは14mmで設定されていることが多くなっています。

この累進帯の上に最低でも約8mmの遠くを見るスペース、下にも約8mmの近くを見るスペースが必要ですので合計で30mmとなるわけです。

では実際のレイアウトはどうなるでしょうか?下記にレイアウト図を入れてみました。

このレイアウトを基にフレームにあてはめたものが左下のイラストです。右下の色がついているイラストは遠く・中間・近くにピントが合う場所をあてはめたものです。このような感じでレイアウトされています。

遠近両用レンズのレイアウト例

ではこのレイアウトを基に、どんなフレームが使いやすいかを見てみましょう。

下記の図は、ユレ・ユガミが発生しやすい部分を黒くした図です。黒が濃くなればなるほどユレ・ユガミが強くなります。さらに周辺部に行けば行くほど黒が濃くなっているのがお分かりいただけると思います。

濃い黒まで使われていると強いユレ・ユガミがレンズの中に存在することになりますので、出来るだけ使われていない形を選ぶ方が良いという事になりますよね。

フレーム形状とレンズの関係 遠近両用にお奨めの形

レンズのユレ・ユガミだけを考えると一番使いやすいのは①のラウンドです。十分な高さがあるので遠くも近くも広くなっていますし、ユレ・ユガミが強くなる濃い黒の部分が少ないです。ただし、俗に言う丸メガネは顔の形や好き嫌いによって掛けられる方が少ない形です。

逆に一番使いにくいのは②のスクエアです。十分な高さが無いので遠くも近くも狭くなっていますし、ユレ・ユガミが強くなる濃い黒の部分が多くなっています。男性が好きな形ではありますが、極端に上下幅が狭く、さらに横幅が広いメガネは遠近両用においてはあまりお奨めできません。

女性に人気の③のオーバルも微妙です。レンズ全体が小さいものが多いので、自ずと遠くも近くも狭くなってしまいます。

輸入品に多い尖った④のウェリントンは、レンズの面積が多く使いやすいのですが、掛ける人を選ぶ形かもしれません。

流行の形で掛けやすいデザインというと⑤の丸みを帯びたウェリントンやの⑥ボストンとなります。これらの形は見える場所と見づらい場所のバランスが取れていて使いやすく、尚且つ日本人の顔の形にも合っている形です。初めて遠近両用を掛ける方には特に⑤⑥がお奨めです。

フレームの形以外の要素でご注意頂きたいのは2点。

一つ目は鼻パッドを支える足の部分が金属でできていることです。プラスチックの鼻パッドですと、ある程度の高さや幅の調整は効きますが、細かい調整は出来ません。金属でできている鼻パッドは調整がしやすいので、微妙な見え方の違いにも対応可能です。

二つ目は分厚いプラスチック枠は避けた方が良いということです。視線を下げた時にプラスチック枠が見えてしまい意外と邪魔になります。

メタル枠でも邪魔に感じる方がいらっしゃいますが、こういった場合はフレームの下だけ枠が無く、ナイロンの糸で吊っているハーフリムレスをお奨めします。

それでも枠が気になる場合は、ネジでレンズを止めるだけのリムレスタイプをご利用いただくことも可能ですが、枠があるタイプを比べると確実に強度が落ちますので、初めてメガネを掛けるという方にはあまりお奨めできません。

●フレームまとめ

遠近両用レンズにお奨めのフレーム形状 初めての遠近にお奨めのフレーム

・レンズの上下幅が30mm以上、出来れば33mmとか35mmある方が使いやすい

・レンズの横幅が広すぎるのは使いにくい

・小さすぎると見える場所が狭くなり、大きすぎるとユレ・ユガミが強くなる

・鼻パッドを支える足の部分が金属でできている物の方が細かい調整が可能

・視線に入るならプラスチック枠よりメタル枠、もしくはハーフリムレスがお奨め

遠近両用を購入すれば、老眼対策はバッチリですよね?

取りあえずは大丈夫ですが…。

と言うのも、遠近両用メガネはあくまでも道具であり、老眼に対する根本的な解決は出来ません。例え遠近両用を作ったからと言って、若い時と同じように“どこにでもピントが合う”という万全なものではないのです。

道具は理解して使うことが大切であり、近くが見づらいという老化現象に対してどうやって補うのか、自分の生活スタイルにどうやって合わせるのかが重要になります。

また、遠近両用レンズは、レンズの場所によってピントが合う距離が決まっておりますので、体や顔の角度、頭の上げ下げや目線の移動など、見たい場所と距離にレンズの見える位置を合わせる必要があり、これらに慣れるまでに数時間から数日程度の時間が必要になります。

老眼の進行 どこまで近くが見えるか 老眼で目からはなす距離 加入の目安

因みに個人差はありますが、老眼は年齢を重ねると共に進行し70歳位まで進んでいくと言われています。老眼が進むと近点(どこまで近くが見えるか)はどんどん遠ざかっていき、45歳から50歳位で限界を迎え、55歳頃には物を持つ手が届かなくなってしまいます。

老眼鏡を使って手前に引き寄せるような感じなのですが、数年ごとに目の状態に合わせてレンズを変える必要がありますので、予定しておいてください。

最後に遠近両用メガネの購入になかなか踏み切れないという方に

下記の図は購買サイクルを一定にして分かりやすくしたものですので、現実のものとは異なりますが、AさんBさんの購買行動を比較してお伝えしていきたいと思います。

共に45歳頃から近くの見づらさを感じ始めたと仮定します。

遠近両用の購買パターン例

●見え方、使い方に慣れることに関して

Aさんは老眼の度数が弱く、体も動くうちに遠近両用を作っていますので、直ぐに慣れられたと思いますが、Bさんは度数が進んでから作っていますので、慣れるまでに苦労されたのではないかと思われます。

遠近両用は、見え方や使い方に慣れる必要があるレンズですので、度数が弱く慣れるのが簡単なうちに慣らしたほうが楽ですので、早めに作ることをお奨めします。

●近くが見づらい期間について

Aさんは50歳で遠近両用を作りました。Aさんにとっては45歳頃から近くの見づらさを感じ始め、そこそこ見づらくなってきた50歳までの間、近くが見づらかった期間になります。50歳で遠近両用を作ってからは近くが見えるようになったはずです。

対してBさんですが、55歳まで遠近両用を作らずに我慢していたと仮定した時、Bさんは見づらい期間がAさんの倍になっています。

しかも、老眼はどんどん進み50~55歳までの間は45~50歳までの5年間とは比較にならないくらい見づらくなっていくことから考えると、単に倍というよりもご苦労や目の疲れは多かったのではないでしょうか?こういった事も早めに作ることをお奨めする理由です。

●金銭面での比較

単純にBさんはAさんよりも購入回数が少ないので、Bさんの方がかかったお金の合計は少ないのが事実です。ただし、満足度に違いが生まれる場合もあります。

両者ともに55歳の時にスタンダードクラスのレンズを購入した時、Aさんは既に遠近両用を使っているので、度数UPと共にレンズのグレードを上げることに対してご理解いただけると思われます。新しい見え方にも直ぐに慣れられたと思いますので、満足度も高いと思われます。

しかし、遠近両用を使ったことが無いBさんにとっては、いきなりセット品よりもグレードの高いレンズを奨められたことに対してご満足いただけない可能性があります。慣れる事にも苦労する可能性がありますし、高いお金を払ってこんな感じなんだと思われるかもしれません。

とは言え、Bさんは老眼の度数が進行している状態なので、あまりグレードの低いレンズはお奨めできない状態になってしまっています。このあたりが非常に難しいところなのですが、お支払いいただいた金額に対して満足度に違いが出ると思われます。

遠近両用レンズ 遠近両用メガネ

●生活の質という考え方

Bさんは50歳から55歳の間、近くが見づらいことでお仕事への影響や、情報収集に積極的になれないなど、生活の質が落ちてしまったことも考えられます。実はこの生活の質が落ちてしまうということが一部で社会的な問題になっています。

もちろん若い頃と比べると遠近両用を使っているAさんでも、近くを見る事が得意ではなくなっているので、若干、生活の質が落ちているかもしれませんが、Bさんよりは良い状態を保てていると思います。

生活の質を落としてまで我慢する必要はないと思いますので、これも遠近両用を早く作ったほうが良い理由の一つです。

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