メガネの買い替え理由
メガネの寿命を聞かれた時、プラスチックレンズであれば一般的に黄ばみが出てくる2年とか3年とお伝えすることが多いのですが、「買い替えをご検討いただく理由」にも答えが潜んでいると思います。
そこで先ずは「メガネの買い替え理由」から見ていきましょう。
メガネの買い替え理由で一番多いのは「見づらくなったから」で、これは目の状態が変化したことによるものです。「目が悪くなった」とか「度数が合わなくなった」とか「老眼が進んだ」も目の状態の変化によるものです。
若い方で近視の場合、早いと半年で度数が変わってしまう事もありますし、老眼の初期は2年持たずに度数を変えることも多いです。
続いて「飽きた」、「イメチェンしたい」、「流行に合わせて」なんかも結構多い理由ですね。「ご近所の奥様が素敵なメガネを掛けていたから」なんていう事を言われることもありますが、これはファッション的な理由ですからここではスルーさせてください。
今回の『寿命』に関係する「フレームが壊れたから」という理由ですが、これは不意の事故的なケースが多くなります。
「人(物)とぶつかった」「子供に叩かれた」「転んだ」「踏んづけた」「物を乗せた」などです。事故的なケースは避けられないかもしれませんが、「踏んづけた」「物を乗せた」などは、ケースに入れて保管していれば防げる場合もあるかもしれません。
そして『寿命』に最も関係するのが「レンズにキズが入ったから」という理由です。
もし、メガネの使い方次第で寿命が縮まるとしたら、何とかして防ぎたいと思うはずですよね。という事で、気付かずに『レンズの寿命』を縮めてしまう行為を順に見ていきましょう。
メガネレンズの寿命を縮める行為 … 乾拭き(からぶき)
レンズが汚れた時、身近にあるものとしてティッシュで拭いてしまう方をよく見かけます。また、服やエプロン、ネクタイなどで拭く方も多いです。
これが「乾拭き」と言われる行為です。
では、何故、乾拭きが悪いのかと言うと、メガネレンズに付着した汚れには、空気中に漂っているチリやホコリが含まれているからです。また、服やエプロンなどは、場合によっては砂などの汚れが付着しているかもしれません。
これらが付いたままで乾拭きしてしまうと、デリケートなレンズの表面をヤスリで擦っているのと同じようなことになってしまいます。
これが気付かずに『レンズの寿命』を縮める行為なのです。
もちろんメガネレンズにはキズが付きにくいコーティングが施してありますし、オプションでもっとキズが付かないようなコーティングもありますが、それでも絶対にキズが付かないという事はありません。擦ればキズは付きます。
では、メガネレンズのケアはどうすれば良いのか、お奨めの方法をご紹介します。
● お奨めの方法
毎朝、洗面所で顔を洗う時に一緒にメガネを洗う習慣をつけると良いです。
先ず、流水でホコリを流し、次にメガネシャンプー等で油分を除去します。メガネシャンプーが無い場合は、台所用の中性洗剤を薄めたものでも構いません。
注意点は熱いお湯を使わないことと、指の腹で軽くこする程度にすることです。決してスポンジ等を使ったり、強くこすらないようにしてください。軽く、軽く、サンドイッチを摘まむくらいの力で十分です。
その後、流水で洗剤を流し、ティッシュで水分を吸い取ってから、仕上げにメガネ専用のクリーナーを吹きかけて、メガネ拭き等で満遍なく伸ばしてください。
これでレンズのケアは終わりですが、日中に汚れがついた時なども、出来るだけ上記と同じ方法でケアすることをお奨めします。
メガネ専用のクリーナーをお奨めする理由は、除菌効果や帯電防止効果が望めるからです。効果は製品によってそれぞれ違いますので、個別にご確認いただきたいのですが、特に帯電防止効果はキズ問題や花粉対策に有効です。静電気を発生させないようにして、チリやホコリ、花粉などを吸い寄せない効果が期待できるからです。
因みに市販のメガネ拭きが汚れた場合ですが、不織布のようなものは洗濯出来ませんが、布タイプであれば普通に洗濯機で洗濯可能です。乾かす時は室内干しをお奨めします。
メガネレンズの寿命を縮める行為 … 溶剤(ようざい)
溶剤とは物を溶解するために用いる液体物質の事を言います。簡単に言うと物を溶かす液体の事です。
ちょうど乾拭きの説明の所で「中性洗剤」という言葉が出てきましたのでもう少し詳しくご説明させて頂くのですが、メガネレンズは非常にデリケートなものですので、アルカリ性や酸性に弱いという特徴があります。これは弱アルカリ性でも弱酸性でも同じで『寿命』を縮める原因になってしまいます。
では、『寿命』を縮めるアルカリ性や酸性の液体とは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
トイレ用の洗剤やカビ取り剤なんかが一番に思い浮かぶかもしれませんね。台所用のキッチンハイターは塩素系漂白剤で強いアルカリ性として有名ですね。
万が一、家事の最中に飛び散ってレンズに掛かってしまった場合は、直ぐに流水で洗い流すことをお奨めします。
化粧品やヘアスプレー等も成分によっては『寿命』を縮める原因となる場合もあります。
時節柄、消毒用のアルコール、特にアルコール度数が強い場合も注意が必要です。
また、気付かずにレンズの『寿命』を縮める行為としては、お風呂で使うシャンプーや石鹸などが挙げられます。自宅なら慣れている環境なのでメガネは外すことをお奨めします。
温泉などに行くと見えないと困るので、どうしても眼鏡を掛けたくなってしまうのですが、そういう時は予備メガネや古いメガネを活用するなどして、普段使いのものと分けて使う方法もお奨めです。
また、接着剤にも気を付けて頂きたいです。
実例として「メガネのネジが外れたから接着剤でくっつけて持ってきた」「メガネが折れたから接着剤でくっつけて使っている」というお客様を接客したことがありますが、接着剤は時として、レンズの表面だけでなく基材を溶かしてしまう事もありますので、使わないようにして頂いた方が良いと思います。
メガネレンズの寿命を縮める行為 … 熱、高温
お風呂や温泉などの話をしましたので、次は熱に関するお話をしていきましょう。
熱は直接レンズに触れるものではありませんが、熱による素材の膨張で問題が起きます。
ここで膨張と収縮だけなら問題が無いのでは?と思われがちなのですが、実はレンズの表面にはいろいろな効果をもたらすコーティングが掛けられており、レンズの基材とコーティングの膨張率が違う事で問題が発生するのです。
もう少し具体的にご説明すると、レンズの基材はプラスチック系で膨張率が高く、コーティングは金属系が含まれることが多く、プラスチックと比べると膨張率が低いという特徴があります。
ここで膨張率が違うものがくっついた状態のレンズに熱が掛かると、膨張率が低い方は膨張率が高い方に引っ張られ、割れて(さけて)しまうという事象が起こります。
肉眼で確認すると、まるで蜘蛛の巣のような細かいキズのようなものが全体的に発生しているように見えます。この状態をクラックと言います。
クラックはキズと同様に修理することは出来ません。また、クラックが入ると全体的にボケた感じに見えるようになってしまいます。
では、どのような状況の時にクラックが入ってしまうのでしょうか?
お風呂や温泉などもその一例ですが、お風呂関係でいうとサウナが一番高温になるので危険です。冷水とサウナを繰り返すのなんてもっての外です。ドライヤーの熱にも気を付けてください。
また、ニュースなどで散々取り上げられていますのでご存じだと思いますが、夏場の車内も非常に危険です。
夏繋がりで言うと砂浜に直接置くのも危険ですし、意外と忘れがちなのがバーベキューやたき火。輻射熱で肉が焼けるくらいなので、炭の具合を見ようとして顔を近づけたら一発でアウトだと思ってください。炭が爆ぜてレンズに当たった時もアウトです。
あと、何げにやってしまうのがタバコです。普段はレンズに火を近づけることはないと思いますが、咥えたばこで何かしようとした時や、灰皿のそばにメガネを置いた時などが危険です。
メガネレンズにキズやクラックが出来てしまった場合
残念ながらレンズの修理というのは出来ません。
レンズは表面を均一にしつつ、その厚みやカーブの仕方で度数を作り出している為、表面の削り直しが出来ないからです。
よって、万が一、レンズにキズやクラックが出来てしまった場合は、メガネを新しく作り直すか、レンズのみ新しいものに入れ替えるという形になります。
どちらも有償となりますので、充分にお気をつけください。
メガネレンズの寿命は取扱いでも変わる!
これまでご紹介した「乾拭き」「溶剤」「熱」に気を付けてお使いいただくと共に、メガネを外した時の置き方や保管方法でも多少なりとも影響が考えられますのでお伝えします。
● 置き方・保管方法
メガネを外した時は、テンプルを折りたたんでレンズの外側を上に向けるようにしておいてください。レンズの外側を下に向けるとキズの原因になります。
また、置く時は踏んづけることが無い高さや場所に置くことも頭の片隅に入れておいてください。
保管方法はハードケース一択です。フレームを守る効果も高いですし、ホコリを寄せ付けません。ソフトケースは潰れてしまう危険性がありますのでお奨めできません。
筒状のメガネスタンドのようなものもありますが、地震などで上から物が落ちてきた際、メガネが壊れて使えなかったという報告もありますので、使う場所の検討が必要です。
メガネレンズの寿命を延ばすコーティング!
これからメガネをご購入しようとしている方は、コーティングのオプションで『寿命』を延ばす方法もありますのでご紹介します。
● コーティングオプション
『寿命』を延ばすコーティングのオプションとして代表的なものは下記の4種類ですが、レンズの種類によって、基準コートとなっているものや、逆に付けられないものもありますので、遠近両用プロショップにご相談ください。
尚、耐傷コートと帯電防止コートの効果に関しては下記の実験結果をご参照ください。
防汚コート … 汚れが付きにくく、ついた汚れも落としやすいコート
耐傷コート … 一般的なハードコートよりも、さらにキズが付きにくくしたコート
耐熱コート … 一般的なコーティングより熱に強いコート
帯電防止コート … 静電気を防止し、大気中のチリやホコリ、花粉等を吸い寄せないコート
遠近両用プロショップでは、お客様の用途に合わせた快適なレンズをご提案させていただいております。特に遠近両用レンズを初めてご使用になる方。もしくは、一度試したが慣れなかった方など、是非、遠近両用プロショップへお気軽にご相談ください。