丁番・蝶番(ちょうばん)とは?
一般的には「蝶番」とも書きますが、いわゆる「ちょうつがい」のことです。「ヒンジ」とも呼ばれています。
建設業界では開き戸や箱の蓋を開閉できるようにするための金具として使われ、その形が蝶々の形に似ていることから、蝶番と呼ばれるようになりました。
眼鏡業界では何故か昔から「丁番(ちょうばん)」の文字を使っており、最近は「ヒンジ」と呼ぶことも増えてきました。
丁番・蝶番(ちょうばん)の構造
眼鏡に使われる丁番に関しては、フロント側に2枚のコマ、テンプル側1枚のコマ、合計3枚のコマの丁番が基本です。
2枚側の上コマは単に穴が開いているだけですが、下のコマにネジの溝が切られており、テンプル側の1枚コマを間に挟んでネジで締め付ける構造になっています。
また、上下のコマと中央のコマの間には、フレームの素材と違う素材の段付きワッシャーが挟まれていて、スムーズな開閉と摩擦による素材の摩耗を防ぐ役割を持っています。
また、この段付きワッシャーを付けた状態でテンプル側の1枚コマを差し込むために、フロント側の2枚の一部が斜めにカットされているものもあります。
丁番・蝶番(ちょうばん)あれこれ①
一日中メガネを掛けっぱなしの方でも、朝起きてメガネを掛ける時に1回、夜寝る前にメガネをしまう時に1回、最低でも一日に2回開閉します。
近くを見るために老眼鏡を使っている方は使うたびに開閉しますし、遠近両用と中近両用、近々両用などを併用される方も掛け替えのタイミングで開閉します。
このように丁番は開閉の力を加えることが多いパーツなのですが、普段から丁寧に扱おうという意識はないのが悲しいところです。
丁番・蝶番(ちょうばん)のあれこれ②
人の頭は側頭部から後頭部に掛けて幅が狭くなっていくので、耳あての後方を内側に曲げるようにフィッティングしていますが、メガネを掛けるときは幅が不足して外側に広げるような力が加わります。
素材の弾力性などである程度吸収されるものの、下記の図の赤い矢印の部分に力が集中しやすくなり、その中の一つが今回ご紹介している丁番となります。
丁番・蝶番(ちょうばん)のあれこれ③
基本の3枚コマの丁番は、その構造から「ねじれ」や「上下方向の力」に弱いという特徴もあります。
さらに、丁番パーツは溶接されていることが多いので、溶接個所に力が加わると、ロー離れ(溶接剥がれ)を起こす可能性も高くなります。これらの理由から破損の可能性が高い場所となっています。
丁番・蝶番(ちょうばん)のあれこれ④
これは外してみないと分からないのですが、低単価のフレームや雑貨品は、コスト削減の為にワッシャーを挟まないことが多く、結果、直ぐに動きが悪くなり固まってしまったり、逆にネジを締めてもパタパタとテンプルが動いてしまうなどのトラブルの原因の一つとなっています。
丁番・蝶番の破損を防ぐ構造 … その1_切削技術
中央の1枚コマの付け根に注目してください。左側の一般的なフレームの丁番は、中央の1枚コマの付け根が直角になっています。
それに対して右側の高級フレームの付け根は、斜めというか丸みを帯びたカットが施されています。
これにより上下方向の力を中央の1枚コマの付け根に集中しないようにしているのです。
小さなことかもしれませんが、高級フレームの高級フレームたる所以の一つです。
丁番・蝶番の破損を防ぐ構造 … その2_コマを厚くする
2枚と1枚で比べると折れやすいのは中央の1枚コマという事になりますので、折れないように1枚コマを厚くするという方法を取ったフレームがあります。
実際に写真のフレームを図ったところ、上下のコマが1.7~1.8mmの厚さなのに対し、中央のコマは5.0mmの厚さでした。
これならば1枚コマが折れるという事はほぼ在りえないです。
丁番・蝶番の破損を防ぐ構造 … その3_削り出し
通常は共通パーツを使用することでコスト削減を行いますので、丁番は共通パーツの方が多いのですが、一部、テンプルと一緒に削り出したものがあります。
削り出しはパーツと違い溶接されていない分、強度が高いです。
また、削りだすという事は元々の厚さが必要ですから、材料原価も高くなります。
因みに撮影したフレームは、その2のフレームほどではないものの中央の1枚コマが厚くなっています。
丁番・蝶番の破損を防ぐ構造 … その4_コマ数増加
これはテンプルが太いセルフレーム等でないと出来ない事ですが、コマ数を増やした丁番があります。
通常が3枚なのに対して、写真の左側がフロント2枚コマ、テンプル3枚コマの合計5枚丁番です。写真の右側はフロント3枚コマ、テンプル4枚コマの合計7枚丁番です。
これは流石に折れたという話を聞いたことがありません。ただし、トラブルの一つとしてネジが途中で折れてしまう事はあるようです。
また、万が一、丁番部分に力が加わった時は、フロント側の丁番がセル生地から外れてしまうという事は発生します。
丁番・蝶番の破損を防ぐ構造 … その5_バネ丁番
メガネの掛け外しの時にテンプルがバネの力で広がるような丁番パーツがあります。それがバネ丁番です。
写真の左側がボックス式と呼ばれており、比較的お求めやすい価格のものや海外からの輸入品に多く見られ、テンプルを広げるとボックスの中に仕込まれたバネが伸びて、丁番から先のテンプルが広がります。
写真の右側がスライド式と呼ばれており、日本製の高級品に多く使われています。テンプルを広げようとすると銀色の部分がスライドしながら間に仕込まれたバネで元に戻すような動きをします。
共に掛け外しの時に使われる機能なのですが、フレームより顔幅が広い場合などは、この部分が適度に広がり、フィット感を高めてくれる場合もあります。
丁番・蝶番の破損を防ぐ構造 … その6_各種板バネ
その5でご紹介したバネ丁番の新種とも言えるのが板バネ。
バネ丁番のバネはコイル状のバネが仕込まれているのに対して、板バネは弾力性のある素材をヨロイやテンプルパーツに繋げることで力を吸収する仕組みです。
写真のフレームの場合、丁番から伸びる部分の金属が弾力性のある素材で、セル枠のテンプルの中に入っている芯材に溶接されています。これが板バネの基本形です。
そこからデザインの力で進化を続け、今ではいろいろな板バネが発売されていますので、機能性とデザインの両方でメガネ選びを楽しむことが出来るようになりました。
丁番・蝶番部から読み取る製品の質
いかがでしたでしょうか?丁番パーツはとても小さなパーツですが、意外と丈夫さや掛け心地に関わる重要なパーツだという事がご理解頂けたと思います。
そこでもう一つ、耳寄りな情報として、メガネの品質を判断する方法をご紹介します。
メッキや塗装を行う時に丁番のネジは締めた状態、いわゆるテンプルとフロントが組み合わさったメガネの状態で行いますが、その後の対応で違いが出てきます。
日本製の場合、製品としてご利用いただく時に快適に使っていただけるようメッキ終了後に丁番の開閉テストやネジの締め付けの確認を行いますので、メッキ時はあくまでも仮止めの状態であり、メッキ後にネジの交換をするのが当たり前のことです。
しかし、海外の大量生産品は開閉テストどころかネジ交換もしません。製品として見た目が出来上がっていればOKという考えが強く、余計なコストを掛ける気はありません。
合理的と言われれば確かにその通りかもしれませんが、製品の価格に直接跳ね返ってくるので、そこまでの品質を望むなら日本製を買えばよいじゃないか?と言われたこともあります。
根本的な考え方が違いますし、販売価格もちがいますので、どちらが正しいかを議論するつもりはありませんが、下記の写真のようにネジの頭の色を見れば、品質の良い日本製(左)なのか、海外での大量生産品(右)なのかは判断が付きます。
眼鏡店の店頭でメガネを選ぶときは、似合う似合わないだけじゃなく、機能や品質、こんな知識も合わせて選ぶとよりメガネ選びが楽しくなると思います。是非、参考にしてください。
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