老眼対策

遠近両用メガネ、中近両用メガネ、近々両用メガネの基礎知識 <後編>レンズ価格の違い

「遠近両用ってどういうメガネですか?」「遠近両用は使いづらいの?」「遠近両用は疲れるって本当?」「遠近とか中近とか近々って何ですか?」といった疑問をお持ちの方向けに遠近、中近、近々の基礎知識をご紹介しています。今回は最終回です。

「遠近両用」レンズの価格の違いは?

設計・オーダーメイド・素材の屈折率・オプション(コーティング等)によってお値段が10倍近く変わります。

遠近両用のグレード別の視野

累進多焦点の遠近両用レンズにおいては、どれだけ多くの設計や技術が含まれているかで大きな違いが生まれます。

例えば発売当初は、膨らんでいるレンズの外側しか削る事が出来なかった為に、レンズの外側に設計と加工を施した外面設計しかありませんでした。次に凹んでいるレンズの内側を削る技術が生まれ、内面設計が生まれました。

外面設計の良いところは、上下方向の目線の移動が内面設計より少なくて済むところです。結果的に視線の移動がラクになります。逆に内面設計は、横方向の視野が広がるのがメリットです。

遠近両用の外面設計、内面設計、両面設計

これらの良いところを合わせて出来たのが両面設計であり、両面で設計を行えるようになったことで多くの設計を入れ込む事が出来るようになり、ユレやユガミも大幅に解消されました。

例えば、乱視軸のズレなどを最適に修正することでクリアに見える範囲が広がったのも進歩でしたし、左右の度数の違いから発生する倍率の違いを補正し、左右両眼でバランスを取ることが出来るようになったのも進歩でした。また、補正ポイントの数量も大幅に増えました。

遠近両用の設計 リスティング則

さらにその後、一人一人の個人データとフレームデータを加味して調整するフルオーダーレンズが生まれ、よりクリアに見える世界が広がりました。

遠近両用のフェイスプロフィール

合計で4段階の設計をお伝えしましたが、イメージ的にはお試しセットで使われるのが外面設計、レンズ単品で販売されているスタンダードクラスが内面設計、ミドルクラスが両面設計、ハイグレードがフルオーダーといった感じです。店舗やセール等によって販売価格は異なります、下限が10,000円前後とすると最高級品のフルオーダーは10万円前後になる事が多いです。

次に素材のお話ですが、素材によって屈折率が異なりレンズの薄さに直結します。

近視の方は凹レンズという真ん中が薄くて周辺部が厚いレンズを使うのですが、度数が強くなれば強くなるほどレンズの周辺部が分厚くなります。見た目で分厚いのが分かることから嫌がる方が多いです。 レンズを薄くするためには、屈折率が高いレンズ素材を選択していただくことになります。屈折率が高くなるほど価格は上がりますが、同時に薄く仕上がるようになります。

最後にオプションをつけるか、つけないかです。

オプションとして昔からあるのはカラー染色やUVカットですが、UVカットは標準装備のレンズも増えました。最近は「くもりどめ」や「抗菌」、「ブルーライトカット」のオプションが人気です。また、「偏光レンズ」や「調光レンズ」といった目の保護や疲れ防止などの機能的なオプションも人気です。

遠近両用レンズのお奨めオプション

オプションを追加すると価格は上昇しますが、個人個人のライフスタイルにあわせたオプションを選択すると、より使いやすいメガネが作れます。

遠近両用メガネを買うときのポイントは?

近くが見づらいと感じたら、出来るだけ早く遠近両用をお試しください。

下記の図は購買サイクルを一定にして分かりやすくしたものですので、現実のものとは異なりますが、AさんBさんの購買行動を比較してお伝えしていきたいと思います。

共に45歳頃から近くの見づらさを感じ始めたと仮定します。

遠近両用の購買行動比較

・見え方、使い方に慣れることに関して

Aさんは老眼の度数が弱く体も動くうちに遠近両用を作っていますので、直ぐになれられたと思います。逆にBさんは度数が進んでから作っていますので、慣れるまでに苦労されたのではないかと思われます。 遠近両用は、見え方や使い方に慣れる必要があるレンズですので、度数が弱く慣れるのが簡単なうちに慣らしたほうが楽ですので、早めに作ることをお奨めします。

・近くが見づらい期間について

Aさんは50歳で遠近両用を作りました。Aさんにとっては45歳頃から近くの見づらさを感じ始め、そこそこ見づらくなってきた50歳までの間が近くが見づらかった期間になります。50歳で遠近両用を作ってからは近くが見えるようになったはずです。

対してBさんですが、55歳まで遠近両用を作らずに我慢していたと仮定した時、Bさんは見づらい期間がAさんの倍になっています。

しかも、老眼はどんどん進み50~55歳までの間は45~50歳までの5年間とは比較にならないくらい見づらくなっていくことから考えると、単に倍というよりも苦労は多かったのではないでしょうか?こういった事も早めに作ることをお奨めする理由です。

・金銭面での比較

単純にBさんはAさんよりも購入回数が少ないので、Bさんの方がかかったお金の合計は少ないのが事実です。ただし、満足度に違いが生まれる場合もあります。

両者ともに55歳の時にスタンダードクラスのレンズを購入した時、Aさんは既に遠近両用を使っているので、度数UPと共にレンズのグレードを上げることに対してご理解いただけると思われます。新しい見え方にも直ぐに慣れられたと思いますので、満足度も高いと思われます。

しかし、遠近両用を使ったことが無いBさんにとっては、いきなりセット品よりもグレードの高いレンズを奨められたことに対してご満足いただけない可能性があります。慣れる事にも苦労する可能性がありますし、高いお金を払ってこんな感じなんだと思われるかもしれません。

とは言え、Bさんは老眼の度数が進行している状態なので、あまりグレードの低いレンズはお奨めできない状態になってしまっています。

このあたりが非常に難しいところなのですが、お支払いいただいた金額に対して満足度に違いが出ると思われます。

・生活の質という考え方

Bさんは50歳から55歳の間、近くが見づらいことでお仕事への影響や、情報収集に積極的になれないなど、生活の質が落ちてしまったことも考えられます。実はこの生活の質が落ちてしまうということが一部で社会的な問題になっています。

もちろん若い頃と比べると遠近両用を使っているAさんでも、近くを見る事が得意ではなくなっているので、若干、生活の質が落ちているかもしれませんが、Bさんよりは良い状態を保てていると思います。

生活の質を落としてまで我慢する必要はないと思いますので、これも遠近両用を早く作ったほうが良い理由の一つです。

遠近両用で充実した視生活

「遠近両用」メガネを購入すれば、老眼対策はバッチリですね?

遠近両用メガネはあくまでも道具であり、老眼に対する根本的な解決は出来ません。ただし、道具は理解して使うことが大切であり、近くが見づらいという老化現象に対してどうやって補うのか、自分の生活スタイルにどうやって合わせるのかが重要になります。

遠近両用メガネは、元の目の状態(近視・遠視・乱視等)やご不便に感じていること、見たい距離や見る時間の長さ等によって、設計の選択や度数の調整が異なりますので、基本的には一人一人に合わせたオーダーメイド製品になります。

ただ、遠近両用を作ったからと言って、若い時と同じように“どこにでもピントが合う”という万全なものではありません。

遠近両用レンズは、レンズの場所によってピントが合う距離が決まっておりますので、体や顔の角度、頭の上げ下げや目線の移動など、見たい場所と距離にレンズの見える位置を合わせる必要があり、これらに慣れるまでに数時間から数日程度の時間が必要になります。

また、一般的に老眼は70歳位迄進んでいきます。数年ごとに目の状態に合わせてレンズを変える必要がありますので予定しておいてください。

ここまで前編、中編、後編と大変長くなってしまいましたが、より良いメガネを作り快適な視生活を送れるよう、是非、参考にして頂けると幸いです。

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