可視光調光偏光レンズのご紹介
前回は「可視光調光レンズの機能」に関して、細かくご説明させて頂きましたので、今回は実際に半年以上使ってみた感想をお伝えしていきたいと思います。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 本人データ
眼鏡業界歴30年以上、50代のおっさんです。
眼の状態は中度の近視で、ここ10年は老眼にも悩まされています。
仕事は事務でパソコン作業が中心の為、中近両用と近々両用を使い、通勤と仕事以外では遠近両用を使っています。
今回の可視光調光偏光レンズも遠近両用をベースとして作製しました。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 「日常」
本来ならメーカーに気を使い真っ先に良いところを褒めたり、消費者の関心を引くためにデメリットをお伝えするべきなのでしょうが、正直言って「特に何も気にすることなく、普通に馴染んでしまった」という感想です。
私の場合、紫外線調光、可視光調光、偏光サングラスをそれぞれ度付きで使ったことがあり、「こういうものだ」という事を理解していたからという話もありますが、直ぐに馴染んでしまったのは、“日常には使い勝手が良かった”からだと思います。
言い換えると『一日中、何も気にすること無く、自然と掛けていられる』という事です。
例えば、ちょっと散歩に出る時やコンビニへ行く時、日々のお買い物、犬の散歩、洗濯物を干すためにベランダに出る時など、わざわざメガネからサングラスに掛け替える方はいないですよね。
そうなのです。こういうちょっとした時に便利さを感じるのです。
こういった細かいダメージの蓄積ってバカにならないのですよね。
でも、今回実験してみた遠近両用をベースとした可視光調光偏光レンズなら、外に出て数十秒後に勝手にサングラスに変化してくれ、眩しさを防ぎ紫外線対策も出来るので「特に何も気にすることなく、普通に馴染んでしまった」というのがご理解いただけると思います。
また、最近は室内でも眩しさを訴える方が増えていますよね。
消費電力が減ることは有り難いのですがLEDって眩しいんですよね。
でも、可視光調光偏光レンズなら室内光でも色が変わりますので、LED照明やテレビなどの眩しさも少しは防げましたので、これも馴染んでしまった要因かもしれません。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 「車の運転」
サングラスは「車の運転に使うもの」と思っている方も多いと思いますので、可視光調光偏光レンズで運転した感想をお伝えしたいと思いますが、その前に確認したいことがあります。
運転する時って、本当に真っ黒なサングラスが必要でしょうか?
凄く眩しい時って、雪道を除くと秋冬の朝夕の太陽が低い時だけですよね。
それ以外で真っ黒なサングラスを使うと暗くなりすぎませんか?
例えばドライブの時は、色鮮やかな景色を楽しむのが非日常で嬉しいはずなのに、サングラスの色が濃すぎると、視界全体が暗くなって爽快感が失われてしまいます。 これは私の場合だけかもしれませんが、若い頃と比べ年齢を重ねるに伴い暗くなりすぎるのはちょっと苦手になってきたのもあります。
そんな私からすると、車の中では“程好い濃さ”までしか濃くならない可視光調光偏光レンズはちょうど良かったのです。天候や時間帯も気にせずに掛けられるのも良いところです。
因みに、数値的に紫外線調光レンズは車の中では30~40%までしか濃くならないのですが、流石に30%だと薄く感じてしまい物足りなさがある方も多いと思います。
しかし、可視光調光レンズは40~50%まで濃くなる事から、色が濃すぎるのが苦手な私にとっては「ちょうど良い濃さ」でした。
まあ、色が濃すぎると視認性が落ち危険性が増しますので、反応が落ち始めている50代にはちょうど良いとも思っています。
補足として、フロントガラスはUVカットガラスになっている為、車の中では絶対に真っ黒になることはありません。また高級車になればなるほど、サイドガラスもUVカットガラスになっている為、より濃くなりません。しかも太陽の光が直接顔に当たる時間帯は限られており、ほとんどが天井で遮られますので、これも濃くならない理由です。
そのあたりを知っておいて頂けると失敗しないと思います。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 「観光地で」
調光レンズ特有の「発色は早いが、退色するには時間が掛かる」という件に関して、観光地で試した結果をご紹介します。
下記の写真は、飲食店で食事する時の状態を時系列で並べたものです。
外気温4度の店頭では、かなり濃く発色した状態でしたが、太陽がもろに当たっていたため、写真ではレンズの色が薄くなっています。 次に店内に入った直後の写真ですが、入店直後は発色した状態の為、店内が暗く感じました。下にメガネ越しの暗さを感じて頂けるような写真も入れてありますので、実感いただけると思います。因みに店内は強い光が当たっていないので、レンズが濃く映っています。
「こんなに暗いの?」とご心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
着席後の写真でも分かる通り、店内に入って5分ほど経過した状態がこの濃さです。メニューもしっかり見えますし、自分では色が付いているという感覚がほとんどありませんでした。
注文後、待つこと約10分。もうほとんど退色しています。このくらい色が薄くなると何も感じません。
結果的に、暗い店内に入った瞬間に少し戸惑うだけで、メガネとサングラスを交互に掛け替える必要がなく、手荷物も減らせますので便利さを感じました。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 「偏光機能」
いちばん気になるのが、紫外線が当たっている時しか効果を発揮しない偏光機能だと思いますので、いくつかご紹介していきましょう。
●ケース1(埼玉県内で撮影・11月)
上段の路面は、雨あがりの一瞬の晴れ間に撮影したものですが、上手いことアスファルトが濡れていて太陽光が反射して眩しい状態になりました。
左右を比較して頂くと、右側のレンズが変色して全体的に黒っぽくなっていますが、明るさはある程度保たれたまま影が濃くなり、見た目が全体的にクッキリしているのが分かると思います。
さらに、眩しく反射している矢印の部分を比較して頂くと、ギラギラした感じは減っているのが確認できます。
下段の水面に関しても、右側は濃淡がクッキリしていますが、遠方にある水面の波に関してはギラギラ感が減っていますし、水面に反射した太陽は鮮明になっているものの、まわりに広がっている光が無くなっているのがお分かりいただけると思います。
●ケース2(山梨県内で撮影・12月)
上段の湖面は外気温4度の快晴で撮影した写真です。温度が低いのでレンズがもの凄く濃くなっていますが、湖面のさざ波に反射した光は和らいでいるのが確認できると思います。
下段のダイヤモンド富士は外気温1度で撮影していますので、レンズがさらに真っ黒になっているのが分かると思います。また、左右の撮影には3分程度の開きがあります。
近視系のレンズを通してみていますので、対象物が小さくなってしまっているのはしょうがないとして、そのまま撮影した左側と比べレンズ越しの写真は、明暗がクッキリして見やすくなっていると思います。
●結果
偏光レンズのヘビーユーザーの方が満足できるか?という一点に限って言うと、正直言って微妙です。
数値的な話から比較してみても、高品質な偏光サングラスの偏光度は99%になりますが、今回の可視光調光偏光レンズの最大着色時の偏光度は90%となり、10%近く落ちてしまいます。
とは言え、使いやすさも一緒に考えるなら、一般の方なら満足できる範囲だと思います。
●補足
因みに、車の中では紫外線がカットされている為に、可視光調光レンズと言えど40~50%の濃さまでしか濃くならないとお伝えしましたが、偏光度もMAXまで出ていないという事になりますので、偏光レンズのヘビーユーザーにとっては物足らないと思います。
例えば、運転中は写真を取れないので写真はありませんが、偏光度が高い偏光レンズを使うと、運転中、対向車の運転手の顔までハッキリ確認することも可能ですが、可視光調光偏光では対向車の運転手の顔までハッキリ確認することは出来ませんでした。
あくまでも偏光機能の比較でしかありませんが、ヘビーユーザーの方には微妙な理由です。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 「色が薄いサングラス」
最近は芸能人の方が、色が薄い“お洒落なサングラス”を掛けているのを見かけますよね。
私みたいな50代のおっさんが気にすることではないかもしれませんが、可視光調光偏光は曇天や街中、室内では色が薄い状態が多いので“もしかしてお洒落”といったメリットもあるように思いました。
しかし、実際に色が薄いサングラスをここ数年よく見かける理由の一つは、光過敏の方やHSPと呼ばれる外界の刺激や体内の刺激にきわめて敏感に反応してしまう気質の方が愛用されているからかもしれません。
そこまでではないとしても、眩しさや光刺激が気になる方の日常用としてお奨めだと感じました。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 「疲れ目防止」
もしかしたら、疲れ目対策に一番効果があったかもしれません。
長距離の運転って疲れますよね。背中とか腰とかも痛くなりますが、目もかなり疲労がたまります。宿についた時にはひと眠りしたいくらいです。
でも、調光機能が付いていることで、ある意味、一日中勝手にカラーコントロールをしてくれるので、普通のメガネを掛けているときと比べると疲労感が違いました。
日差しの強い屋外では色が濃くなり、曇りなら中間色に薄くなる。運転中も程好い濃さになり、目を保護してくれるのです。
サングラス有と無しを同条件で比較することが出来ないのと、感覚的なことで数値化できない事もありますが、私の場合、一日で300km以上運転するとかなり違いが出ました。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 「驚かれる・自慢できる」
眼鏡業界に従事している方なら誰しもが知っていることなのですが、まだまだ一般の方は色が変わるレンズがあることを知りません。
よって「あれ?サングラスに掛け替えたの?」とか、「さっき、サングラス掛けていたよね?」などと驚かれることが多いです。そこで間髪入れずに「色が変わるレンズ」という事を伝えると「へ~」とか「凄~い」と言われることが多いです。
まぁ、話のネタ程度ですけど意外と使えますよ。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 「注意点」
気を付けないといけないこともご紹介しておきます。
先ず、可視光調光偏光レンズは完全に色が抜けて無色透明になる事はありません。室内でも薄い色は付いています。これにより接客関連や固いお仕事には向かない可能性はあると感じました。
接客関連や固いお仕事の方には、室内でほぼ無色になる一般的な紫外線調光(偏光機能無し)の方が向いているかもしれません。
次に車の運転に関してですが、山間部の運転に対する不便さは無くなりませんでした。
これは色が濃い偏光レンズや普通のサングラスを使っていても同じなのですが、トンネルに入った瞬間、光量不足で危険を感じることとなります。地下駐車場も同じです。
よって、色が無い普通のメガネに掛け替える必要があります。
可視光調光偏光レンズ体験記 … 「まとめ」
あくまでも個人的な見解ですが、機能面と元々の眼の状態から、下記のようなことが考えられます。
先ず、機能面で考えた時、偏光レンズは偏光度という反射光を遮る割合が数値化されたもので品質を問う部分があり、ヘビーユーザーの方は99%の偏光度に慣れている方がほとんどの為、可視光調光偏光の最大着色時の偏光度90%では物足らなく感じる可能性があります。因みに、最大着色時以外の色が薄い時はもっと偏光度が低くなります。
これに対して調光レンズの利便性を知っている方にとって可視光調光偏光は、従来の調光レンズより発色も退色も早く、車の中での色付きも濃くなり、さらに家の中でも眩しさを防げるなど、便利さが増したレンズとなります。
次に、元々の眼の状態で考えた時、遠くが良く見える方で、普段、メガネが不要な方には、眩しい時や趣味で使う時だけ掛ける色が変化しない偏光サングラスの方が有益かもしれません。
逆に、普段からメガネが必要な方にとっては、1本でメガネとサングラスの両方の使い方が出来る可視光調光偏光は便利なものになるように思います。
このような事から、サングラスが欲しい方には従来の偏光サングラスがお奨めで、メガネが必要な方には、今回ご紹介した可視光調光偏光レンズがお奨めと感じました。
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