お話をうかがいました
里和(さとわ)さん
帽子とメガネのスタイリスト
2006年より帽子作家として活動。銀座三越や京王百貨店(新宿)などでグループ展を行った際、「似合う帽子の選び方」を知りたいお客さまがたくさんいることに気づき、「似合う帽子を見つける3つのポイント」を帽子理論として独自で体系化。その後、帽子スタイリストとして活動を始める。同時期にメガネの相談を多く受けるようになり、現在はメガネと帽子のスタイリストとしても活動。メガネの買い物同行サービスやプロ向けの講座「メガネと帽子のプロ養成カレッジ」なども開催している。
繊細さんとは?
「周りに機嫌が悪い人がいるだけで緊張する」
「細かいところに気づいてしまい、仕事がはがどらない」
周りの人が気づかない小さなことも気づきやすい、繊細な気質の人がいます。
アメリカの心理学者エレイン・アーロン氏が行った調査によると「生まれつき繊細な気質をもった人」が5人に1人はいるということがわかっています。アーロン氏はこのような気質を持った人たちのことを「HSP(Highly Sensitive Person)」と名付けました。HSPは直訳すると「繊細な人」「敏感な人」となりますが、HSPに関する著書を数多く出していらっしゃるHSPカウンセラーの武田友紀さんはこういった気質を前向きにとらえ、HSPの気質を持つ人のことを「繊細さん」と名付けたそうです。
繊細さんのなかでも光や音に敏感な人、臭いに敏感な人、天気の気圧に左右される人など様々なタイプがいるそうで、どのタイプにも共通している点は、五感が敏感で常にアンテナを張っている状態のため疲れやすいということ。実は繊細さんなのに、その気質に気づいていない人もたくさんいるそうです。
\HSPセルフチェック/
23個の設問に答えて、ご自身が繊細さんかどうかをチェックしてみましょう。深く考えず、当てはまると思ったら「はい」、当てはまらなかったら「いいえ」と答えてください。
- 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ
- 他人の気分に左右される
- 痛みにとても敏感である
- 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる
- カフェインに敏感に反応する
- 明るい光や強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい
- 豊かな想像力を持ち、空想に耽(ふけ)りやすい
- 騒音に悩まされやすい
- 美術や音楽に深く心動かされる
- とても良心的である
- すぐにびっくりする(仰天する)
- 短期間にたくさんのことをしなければならない時、混乱してしまう
- 人が何かで不快な思いをしているとき、どうすれば快適になるかすぐに気づく
(たとえば電灯の明るさを調節する、席を替えるなど) - 一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ
- ミスをしたり、物を忘れたりしないようにいつも気をつける
- 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
- あまりにもたくさんのことが自分のまわりで起こっていると、不快になり、神経が高ぶる
- 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
- 生活に変化があると混乱する
- デリケートな香りや味、音、音楽などを好む
- 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している
- 仕事をする時、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる
- 子供のころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」 とか 「内気だ」 と思っていた
いかがでしたか?
質問のうち12個以上に「はい」と答えた場合は、繊細さんの気質があると言われています。仮に「はい」が1個や2個の場合でも、選択した項目の度合いが極端に強い場合は、繊細さんの気質があると言われています。
引用:
ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。
エレイン・N・アーロン [著]・冨田香里 [訳] 講談社 / ソフトバンク文庫
里和さんも、人との距離感や光と音に強く反応してしまう「繊細さん」
この連載をお願いしている里和さんも繊細さんのひとり。お友達との会話で「あんなこと言ってしまって大丈夫だったかな?」と 1週間くらい悩んでしまう。そんな自分が嫌だったそうですが、繊細さん気質の人に「里和さんも同じような気質持ってるんじゃないかな」と指摘されたことをきっかけに、繊細さんに関する本を読んでご自身がその気質だということに気づき、気持ちがラクになったそうです。
――人との距離感以外にも、強く反応してしまうことはありますか?
里和 まず光ですね。太陽の日差しだけでなく、反射した光や裸電球の光をすごく眩しく感じます。
――そうなるとパソコンやスマホの光も眩しいですよね。
里和 そうですね。特に夜は使わないようにしています。スマホの照度をかなり下げて使っていますが、画面が眩しくて疲れてしまうため、触っている時間は少ないですね。
伊達メガネでもいい。「繊細さん」がメガネをかけるメリット
――繊細さんがメガネをかけると、どんなメリットがあるのですか?
里和 人によって感じ方が違いますので、私の場合はという前提でお話をしますね。メガネをかけると視覚的にも気持ち的にも、とてもラクに感じます。繊細さんの性質のひとつでもあるようなのですが、私のように視力が良く目からの情報をたくさん取り入れてしまう人は見るものを必要最低限に抑えるほうが良いそうです。
私の場合、人がたくさんいる場所や高い建物で周りが見渡せない場所、車がビュンビュン走っている幹線道路のそばにいるとぐったりと疲れてしまうのですが、メガネをかけることでそのような場所にいても疲れにくくなりました。
――メガネをかけるだけでラクになるのは何故なのでしょう?
里和 まず、レンズの存在が透明なバリアになって、相手と適度な距離感が保てるように感じるからだと思います。さらに、メガネをかけると視界が適度に狭くなって、目から入ってくる情報を自分でコントロールできるようになったのかもしれません。その結果、疲れにくくなり、安心感も生まれるようです。私の場合ですが、特にフチが太めのメガネをかけるとその効果が感じやすくなります。
――里和さんは、視力が良いということですが普段はどんなメガネをかけているのですか?
里和 レンズにUVカットや傷のつきにくいコーディング加工をした度なしのレンズをつけた伊達メガネを使っています。
\伊達メガネでも度なしレンズに交換を/
視力が良いからといって、メガネに初めから装着されている「デモレンズ(ダミーレンズ)」と呼ばれるレンズをそのまま使用することはおすすめできません。紫外線カットや、反射やギラつきをカットする反射防止コート、ブルーライトカットなどのコーティング加工を施した度なしレンズに交換して使用しましょう。
――里和さんのように光に敏感な人はカラーレンズも良いでしょうね。
里和 そうですね。私は光に反応しやすく眩しがりなので、外出するときはサングラスをかけることも多いです。
――繊細さんがサングラスをかける場合、レンズのカラーは好みの色で大丈夫ですか?
里和 人によって敏感に反応してしまうカラーがあるかもしれませんので、お近くのメガネ店で色々試された方が良いと思います。
――濃度については?
里和 眩しさを感じる敏感さは人によって違いますし、「見た目は気にせず快適さが大切」または「快適さは多少我慢しても見た目にこだわりたい」など、カラーレンズを選ぶとき何を重要視するかによっても濃度は変わってくると思います。私の場合は、濃度が濃すぎて怪しい感じになるのが嫌なので、目が映るくらいの濃度にしています。
音の聞こえ方がまろやかになる。「繊細さん」に安らぎをくれる帽子の効果
――里和さんは、音に対しても感じやすいそうですね。
里和 40歳を過ぎてもモスキート音*がいまだに聞こえるくらい、音を敏感に感じます。私の場合は生活に支障が出るほど敏感ではないですが、冷蔵庫の「ウォーン」というモーター音がうるさすぎて寝られないとか、スーパーの食品売り場の冷蔵機器のモーター音やBGMがうるさすぎてヘトヘトになってしまうという人もいるようです。
*20歳を過ぎると聞こえなくなってくると言われる、蚊の羽音のような音のこと。
――里和さんにとって、帽子をかぶることではどんな効果があるのですか?
里和 私の場合は、帽子をかぶると頭が守られているような安らぎを感じます。全体にツバがあるタイプの帽子をかぶると、周りの音が耳に直接入ってこないため、音の聞こえ方がまろやかになってラクになります。ただし、触覚が敏感な人は帽子をうっとうしいと感じることがあるようで、感じ方は人によって違うようです。
メガネや帽子の「感じる力」やわらげ効果に期待!
なんだか「疲れがとれにくい」と感じている方へ。もしかしたら、目と耳から入ってくる情報が多すぎるからかもしれません。メガネや帽子を使うことで適度に「感じる力」を和らげ、心とからだがラクになるいったケースもあるようです。
気になる方は、ぜひ一度、メガネと帽子を試してみてください。
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