目のケア・メガネのお手入れなど

検査枠・検眼枠 … メガネ屋さんの視力測定で使う気になるあのフレーム

メガネを作ったことがある方なら一度は掛けたことがある黒くて丸いバネの利いたフレーム。レンズをカチャカチャ入れ替えて、視力測定をしたことありますよね?今回は視力測定の時に使っている検査枠・検眼枠を作っているメーカー様にお話を聞きました。

検査枠・検眼枠のメーカー「ハセガワ・ビコー」とは?

視力測定の時に使っている「検査枠」、呼び方は「検査枠」「検眼枠」「試験枠」「トライアルフレーム」といろいろありますが、作っているメーカーさんは東京の江戸川区にあります。

㈱ハセガワ・ビコーhttp://www.bicoh.co.jp/)様という会社です。

実は、検査枠・検眼枠の全国シェア80%以上という凄い会社で、1977年7月から眼鏡業界を陰で支えてくれている有り難い会社なのです。

ハセガワ・ビコー 検査枠 検眼枠 試験枠 テストフレーム

今回、インタビューを申し込んだところ、工藤社長直々にお話をしてくださることになりました。一度はお世話になったことがあると思われる検査枠・検眼枠に関してご説明していきます。

● 工藤勲社長

経歴  :1967年東京生まれ 大学卒業後 保険会社を経て眼鏡業界へ

業界歴 :1999年にハセガワ・ビコー入社 2021年に代表取締役に就任 業界23年

業務内容:入社以来、ずっと企画営業をやっておりました。

モットー:メガネを快適にするのが仕事です!

検査枠・検眼枠っていつ頃からこの形式に?

筆者:私が眼鏡業界に身を置くようになった30数年前には、既に黒くて丸くてバネが効いていて、メモリがいっぱいついているこの形式だったのですが、いつ頃からこの形になったのですか?

工藤:時期がはっきりしないのですが、国産で軽量式三重固定試験枠(村田式)という

ものが最初ではないかと思います。これが黒くて丸くてバネが効いていてメモリがいっぱいついているものです。

ハセガワ・ビコー 検査枠 検眼枠 試験枠 テストフレーム

筆者:何故、丸いのですか?

工藤:丸い理由は、乱視のレンズの軸を回転させられるようにしているからです。

乱視は角膜や水晶体のカーブが方向によって違うため、屈折力が縦と横、あるいは斜めで異なり、焦点を一点に合わせることが出来ない目の状態のことを言います。

メガネの乱視は1°から180°までの角度で方向性を表しますので、方向性に合わせた角度に乱視用のレンズを回転させながら入れるため、丸くなっているのです。

それと眼科・眼鏡店に常備されている検眼レンズが38mmφ(真円)のものが標準となっておりそれに合わせるために真円になっています。

筆者:何故、黒いのですか?

工藤:黒い理由は、乱視の角度を示すメモリが見やすくする為です。

今は明るい検査室で測定することが多くなりましたが、昔の検査室は暗いことが多く、暗いところで黒い文字だと見づらいことから白い文字にしていました。

さらに、白い文字が見やすいのは黒地という事で黒くなったのです。

また、検眼枠本体が明るいカラーの場合、照明が反射したりして被験者が検眼に集中しにくいということもあり黒が主流になっておりました。

ハセガワ・ビコー 検査枠 検眼枠 試験枠 テストフレーム

筆者:検査室にはオーブンのようなボックスが置いてあって、その中に何本か入っていましたよね?

工藤:紫外線除菌庫(クリーンボックス)のことですね。検眼枠はいろいろなお客様が使いますから、メガネ屋さんでは昔から除菌庫で保管しつつ除菌していたんです。ある意味、先進的だったんですね。

数本入っていたのは、PD(ピーディー)と呼ばれる瞳孔間距離(左右の黒目の間の距離)別にサイズがあるからです。ブリッジ部分に60とか64とか数字が書いてありますよね。60は瞳孔間距離が60mmという事です。

当社のPD固定式検査枠には48~74mmまで2mmピッチで14段階のサイズがあります。

筆者:確かにそのくらいありましたね。

あれ、数が多くて置き場所に困ったんですよ。

工藤:ですから最近の検査枠は、瞳孔間距離を調整できるようになったものが発売されています。

ハセガワ・ビコー 検査枠 検眼枠 試験枠 テストフレーム

筆者:最近の検査枠は、どれぐらい進化しているのですか?

工藤:瞳孔間距離を調整できるだけでなく、鼻パッドは高さ、幅、角度の調整も出来ますし、フロントの前傾角の調整も可能です。テンプルの長さも調整可能で、さらに素材をチタンやアルミ、ステンレスにすることで軽量化を実現し掛けやすくなっています。

筆者:凄いですね。1本あれば事足りてしまいますね。

工藤:確かに1本あれば事足りてしまいますが、瞳孔間距離と全体的な大きさの問題がありますので、大人用PD54~74と子供用PD48~60の2種類をご用意いただくことをお奨めします。これを万能式検査枠と呼んでおります。

また、より軽くしたいという事であれば、1~2g軽くなるだけですけど枠の下の部分が無い検査枠もあります。

因みに、下の部分が無いタイプは遠近両用(累進)の検眼に適しています。遠近両用のテストレンズは真円ではなく縦長のもの(名称:ローポイント)もありますので、下の部分があると邪魔ですからね。

耳の掛かりが強い検査枠と優しい検査枠で2種類、フルリムとハーフリムで2種類、そして大人用と子供用のサイズ展開が2種類。2×2×2で合計8種類の検査枠をご用意しています。

ハセガワ・ビコー 検査枠 検眼枠 試験枠 テストフレーム

筆者:結構な種類があるんですね。でも、人に見せるわけではないので明るい色をした薄いブルーの枠なんて必要ないんじゃありませんか?

工藤:見栄えを気にしているのではなく、検査に対する恐怖感のようなものを和らげるためのものです。金属の色って冷たい感じがするじゃないですか?少しでも気分を和らげられたらという配慮は必要だと思うので、メーカーとしてはご用意するべきだと思っています。因みに、お子様用のブルーの検査枠はございますよ。

ハセガワ・ビコー 検査枠 検眼枠 試験枠 テストフレーム

筆者:へ~、知らない間に随分色々なものが増えているんですね。

工藤:そうですね。よりきちんと検査枠を固定できるようにバンド式のパーツもありますし、眼瞼下垂(がんけんかすい)の方用にまぶたを持ち上げるバーが付いた検査枠もあります。

スポーツ用のフレームの見え方を体験する為に、カーブがついた検査枠もご用意しています。

そういえばご存じですか?超最新式は片眼PD調整機能までついていますよ。

ハセガワ・ビコー 検査枠 検眼枠 試験枠 テストフレーム

筆者:それ理想的じゃないですか。

片眼PDを調整できると、遠近両用や強度近視の検査の時に、より良い度数選択や見え方体験が可能になりますね。

工藤:はい。「メガネを快適にするのが仕事です。」というのがハセガワ・ビコーのモットーですから。

「ハセガワ・ビコー」様の優れたアイテムの数々

筆者:眼鏡業界の中でも、ハセガワ・ビコー様が検査枠を作っているのを知らない人もいますよね?

と言うか、ハセガワ・ビコー様の場合、眼鏡店の店頭で販売されている「メガロック」や「メガネグリップ」、「セルシール」、「ローグラス」等の便利グッズの方が有名なので、これらのメーカーだと思っている節がありますよね。

ハセガワ・ビコー メガネグリップ メガロック セルシール ローグラス

工藤:そうですね。出荷数からしたら圧倒的に便利グッズの方が多いですからね。

筆者:眼鏡店の店頭に必ずと言っても良いほど「メガロック」や「メガネグリップ」を置いていますもんね。

工藤:有難うございます。

筆者:パッドの跡が付きにくく、化粧移りも少ないハイロンパッドや、肌あたりが優しいクッションパッドなんかも有名ですよね。

工藤:有難うございます。特にハイロンパッドは大変多くのブランドの女性用フレームで採用して頂いております。

あっ、これ、超~マニア向けかもしれませんが「シリコンパッド」や「シリコンモダン」って世界で初めてハセガワ・ビコーが作ったんですよ。

筆者:本当ですか?その話は僕も知らなかったです。

ハセガワ・ビコー シリコンパッド シリコンモダン

工藤:はい。先代の時代ですが、「メガネを快適にするのが仕事です。」というモットーを掲げ、何か快適にできるものはないかと色々商品開発しているうちに、消費者からの要望で作ったそうです。

シリコンパッドは今では当たり前になりましたが、当時は画期的で生産が追い付かなかったと聞かされています。

筆者:シリコンパッドが発売された当時は重たいメガネを掛けている方も多く、肌への吸着性が良いシリコンパッドは重宝されたことを覚えています。掛け心地が良くなって快適にメガネを使っていただくことが出来るようになり、お客様に大変喜ばれました。

工藤:そうですか。メガネを快適にすることが出来れば本望です。

これからも良いものを作っていきますので、何かご希望があったら教えてくださいね。

筆者:こちらこそ、これからも眼鏡業界を支えてください。お忙しいところ、インタビューへのご協力、誠に有難うございました。



遠近両用プロショップでは、お客様の用途に合わせた快適なレンズをご提案させていただいております。特に遠近両用レンズを初めてご使用になる方。もしくは、一度試したが慣れなかった方など、是非、遠近両用プロショップへお気軽にご相談ください。